杉並区桃井の2世帯住宅 「泡の家」

杉並区桃井の2世帯住宅 [2013年]

生活ゾーンを完全に分離型としながらも、
親密さを保てる程良い距離感を「部屋の配置と連なり方」によって作り出しました。
無数の部屋の連なりを泡に見立て、不定形な敷地にもぴったりフィットさせました。 

泡の家 (3)
地主さんが土地を切り売っていった最後に残った土地で、
大通りから50mほど奥まったところにある変則形状敷地です。
四方を住宅に囲まれています。
途中の曲がり角は車も曲がれず、解体も上棟もすべて手運びとなりました。
こうした密集地においては近隣との距離の取り方、光や風などの環境要素の取り込み方なども課題となってきます。

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インテリアの色彩は白とナラ材の赤みがかった色が主体なのですが、
お持ちの家具や子供のおもちゃ、そして選ばれるカーテンなどが緑を基調としているとのことで、
玄関ドアの色を緑にしています。
緑の玄関とはどんなものかと、少々どきどきしていたのですが、
住み始められて拝見すると、うまくなじんでいました。
インテリアと良く調和しています。
(もちろん緑色といっても無限のバリエーションがあるわけですから、
配色とその関係性を綿密にお施主様と検討しました。) 

玄関を入ると目の前が納戸です。
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納戸は普段履かない靴から、キャンプ用品に至るまで、
様々な大きさを想定していろいろな奥行き設定をしました。
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主寝室
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階段は手摺の支えとなるスチールが目立たないように、角度を付けて設置しています。
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2階の洋室から廊下をまたいでリビングまで一直線に視線と風が通ります。
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猫階段を設置。
PSヒーターと太陽の熱でひなたぼっこする猫が目に浮かびます。
猫が猫階段と家の階段を使って、家の中をぐるぐると回遊できるようになっています。
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リビング、ダイニングはこんなにも開放的です。
スペースとしては実は9畳ぐらいしかないのです。
中庭と空をうまく連結させれば、こうした広がりを作ることが出来ます。


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変わった形の扉でしょう?
子どもがまだ小さいのでキッチンに入って来れないようにしています。
高さが半分の扉は動かすときにガタつくので横長にして安定した開閉を実現しています。
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キッチンの奥にパントリーを設けています。
ゴミも収納できるスペースとなっています。
背面カウンターの上にコンセントと窓を設け、
電子ジャーの蒸気を逃がせるようにしています。
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引っ越ししたら、子供の転落防止用のネットを張ります。大きくなったら取り外します。
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三角形の屋根裏を利用した納戸を設けています。
一番奥はご主人の隠れ家的な書斎にする予定。
・・・ということでネット回線も入れてます。(笑
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左手に見えるのは「猫扉」付のトイレ
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濡れたバスタオルをちょっと掛けておけるPSヒーター。泡の家 (52)

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トイレ内に設置した手洗い。
家に帰ってきたら子どもが手を洗ったり、
朝、3階の洗面所まで行かなくても使えるように設置。
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御両親世帯の玄関。
玄関前に段差がついているのが一般的な作り方ですが、
この家では玄関内に段差をつけました。
腰掛けられるようにという意図もありますが・・・、 
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玄関の内側で段差を作って、玄関の外の段差を無くしました。
こうすることで、玄関前のアプローチで子どもが三輪車で自由に遊び回れるようになります。
玄関前のスペースで子供が遊べるようにとのご要望を頂き、
玄関内での段差を御提案しました。
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対角線の抜けを作ると風通しも良くなりますし、広々とします。
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3枚の建具を開ききると、道路側から中庭まで風が通り抜ける空間になります。 泡の家 (68)

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アプローチ側は日差しの入る縁側のような空間になっています。
子供が帰ってきたら、ちょっと立ち寄ったり声を掛け合ったりするような空間にしています。

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2階の和室は一日中陽が当たります。
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この部屋は4畳ぐらい。
もちろんベッドも置けますし、外への出入りも自由です。
小さい部屋というのは体のサイズに近くなっているので、
ほんのちょっとしたことが使い勝手にすごく影響が出るので、
家具の配置を想定した上で、慎重に寸法設定と窓配置を決定します。

ちなみに私はこういう小さい部屋が結構好きです。
その分、みんなで使う部屋を広くしたほうが全体として良い結果を生むように思います。
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2世帯住宅なのですが、法的に一戸建てとして扱うためということもありますが、
いざというときの連絡通路を設けています。
この扉の奥からが親御さん世帯となります。
防音扉を採用したので、普段は互いの音がほとんど気になりません。

親御さん世帯は1階がリビングなのに対して、子世帯は2階がリビングなので
天井高を細かくコントロールする必要がありました。
そのため世帯の境界に段差が発生しています。
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完全分離型の2世帯住宅なので共用する部分がありません。
しかし近接させて、中庭を通じてお互いの家が向かい合うように建てれば、
窓の明かりによって親世帯を気遣うことが出来ます。
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3階にお風呂があり、遠方から覗かれないように、
方向によって視線を制御できるフィルムを窓に貼っています。

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玄関前の段差が無いので広々しています。またアプローチの土間コンには打設と共に墨汁を練り込んで、継ぎ目のない平滑な面にしています。

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「泡の家」データシート

意匠設計・監理 株式会社VIT (旧・黒澤亮建築設計事務所)
構造設計・監理 株式会社VIT (旧・黒澤亮建築設計事務所)
主要用途:2世帯住宅(完全分離型)
敷地面積:143.52㎡(43.41坪)
建築面積:79.42㎡ (24.02坪)
建ぺい率:55.34%
延床面積:179.38㎡(54.26坪)
1階:72.63㎡ (21.97坪)
2階:76.99㎡ (23.29坪)
3階:29.76㎡ (9.00坪)
容積率 :124.99%
規模 :木造3階建て(在来工法)

 Photo : Ishii Atelier