「ワンルームマンションを再定義すること」
それがこの建築のテーマです。
本計画は木造3階建ての共同住宅であり、
防火をはじめとする法的制約が多く、
設計の自由度が高い建物ではありません。
さらに収益物件として成立させるために、
家賃相場や建築費とのバランスを慎重に考えました。
一般的なワンルームでは、玄関のそばに水廻りをまとめるのが定型とされています。
限られた面積を効率よく使うための合理的な配置ですが、
その結果、玄関は通過するだけの場所になりがちでした。
本計画ではその前提を一度外し、
玄関をバルコニーとセットで捉え直しています。
外とつながる場所を生活の入口に重ねることで、
ワンルームの中にもう一つの居場所をつくることを目指しました。
ワンルーム住宅では、玄関と水回りをセットで配置するのが一般的です。
限られた面積の中では合理的な構成ですが、
玄関は北側に置かれることが多く、昼間でも照明が欠かせない場所になりがちです。
居室とは環境が大きく異なるため、
「玄関・水回り」と「居室」がはっきり分断された関係になっています。
一方で、バルコニーもまた生活の中で十分に使われているとは言えません。
洗濯物を干したり、室外機やゴミを置いたりと、
必要な機能は担っていますが、
プライバシーの問題からカーテンを閉めたまま過ごすことも多く、
居室とは切り離された存在になっているケースが少なくありません。
こうした、使われながらも居場所になりきれていない
玄関とバルコニーの関係性を見直すことができないか?
「玄関」と「バルコニー」という従来は切り離されていた2つのスペースをつなげることで、単なるワンルーム以上の、外部との関係まで含んだ広がりのある暮らし方に気づきました。

家に帰って玄関を開けると「玄関・バルコニー・居室」が一体化した空間が広がります。
バルコニーにはエアコンの室外機は置きませんでした。
屋外コンセント、屋外水栓もつけたので、広々といろいろな用途に使えます。
室内は伸びやかな広がりを獲得しました。反対側から光も差し込んで、光と風が通り抜ける空間となりました。
ちょうどお昼ぐらいの時間帯です。北側の窓と、バルコニー側からの光と相まって、日中は均質な柔らかい光に満ちた空間になります。照明をつけなくても一日中明るいです。北側の窓はプライバシーを確保できるように、目の高さぐらいに設定しました。また、高いところにある窓というのは効率よく室内に光を入れることができます。

バルコニーが1.5m跳ねだしていて敷地が道路に対して斜めなので、鋭角のシルエットが生まれました。
夜になると、昼間とは違う空間の一体感が出てきます。将来的なリフォーム時にウッドデッキを敷けばバリアフリーの床として連続的に使えます。
室内と外部が連続したような空間が生まれます。
手摺りを高めに設定したので、季節の良い時期にはバルコニーで本を読んだり、お酒を飲んだり、快適に過ごせると思います。
室内だけでなく、外部でも過ごせるとしたら、それはもう今までのワンルームマンションとは「生活の質」が異なります。
バルコニーには水栓も用意したので、ちょっとしたガーデニングもできます。
駅に近い立地という条件もありますが、竣工前の告知段階で予約率が300%を超えたという反響があり、こうした空間提案が実際のニーズに届いたことを実感しました。
Photo : Ishii Atelier










