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VITの日々の活動や、超高性能エコハウスに関する情報を発信しています。家づくりにとって大切なことを丁寧に解説いたします。

ダクト式第3種換気~1種換気と3種換気の比較考察~

ダクト式第3種換気とは?

日本ではダクトレス式第3種換気が最も普及しています。安価に、しかも設計もメンテも簡易にできることから広く普及しています。それに対してダクト式第3種換気というものもあります。気密性が一定以上確保されていれば、各部屋の汚れた空気を力強く確実に引っ張ることができ、いわゆる計画換気の確実性が高まります。

ではダクト式第3種換気とはいかなるものか?

日本住環境さんにお越しいただいて、いろいろお聞きしました。重いのに機械を組み込んだアタッシュケースを持って弊社にお越し頂きました。ありがとうございました。

※換気方式の概要 1種と3種の方式が一般的に採用されている。

1種換気:機械給気+機械排気

2種換気:機械給気+自然排気(主に病院など)

3種換気:自然給気+機械排気

4種換気:自然吸気+自然排気(計画の難易度が高い)

商品はルフロ400


ルフロ400 各部屋の排気口からダクトを通って一箇所に集めて屋外に排気: 日本住環境 紹介冊子より引用

なんと言っても驚いたのはその静粛性。少なくとも中運転であれば、昼間は全く音が感じられないレベル。こればかりは実物を見て動かしてみないとわかないですよね。また、メンテの簡易性や設計思想も素晴らしいです。簡単に蓋を外して清掃できるように考慮されています。また、浴室の換気も可能とのこと。

数年前にも別商品の件で日本住環境の方とお打ち合わせさせていただきましたが、社員の方達の商品熟知度がすばらしい。(メーカーの社員さんなんだから、当たり前といえば当たり前なんですが、最近はそうではないメーカーさんも多くて、、、大変だと思うけど頑張って!)

ダクト式第3種を使う必要性が出てきた場合は、この機械を組み込んでみたいと思いました。とにかく、しっかり換気したいけど、安価で堅牢なシステムで、メンテはズボラになりがちなご家族にはおすすめです!
「賃貸住宅やアパート、マンション」など、必ずしもメンテに意識的なご家庭が住むとは限らない場合に組み込んでもいいと思います。
※メンテを怠りがちなご家庭でも問題が出にくいように設計された商品ですが、もちろんメンテはこまめに行なったほうが良いです。少なくとも大掃除の年末には必ずメンテする、といった具合に。

1種換気と3種換気の違いと特性

3種換気は1種換気よりイニシャルコストが安いですが、熱交換をしない換気方式なので冷暖房費は当然コストアップします。ただしこれは24時間全館空調+3種換気する場合です。

在宅時間が比較的短いご家庭の場合、個別エアコン間欠運転+3種換気だとコストメリットを受けられる可能性は高いです。(もちろん高気密高断熱が前提です)

※ちなみにルフロ400の場合は15~16万円ぐらいとのこと。別途工事費がかかる。

間欠運転:一時的に必要に応じてエアコンをつけたり消したりする運転のさせ方。

連続運転:夏季や冬などの冷暖房需要時に24時間つけっぱなしで運転させる。日本人の感覚からすると「もったいない精神」が働いてしまうが、高気密高断熱が一定レベル以上(G2.5相当以上)になると間欠運転より連続運転の方がランニングコストが安くなる。

各室個別エアコン:全館空調が1個,または2個のエアコンで冷暖房を賄うのに対して、各部屋に個別にエアコンを設け、必要に応じて各部屋ごとにエアコンを稼働させるやり方。

全館空調:定義はいろいろあるが、ここでは方式はなんであれ、エアコン1台など、少ない熱源数で家全体の温湿度をコントロールする空調システム全般を示す。

一方、24時間全館空調+1種換気は、ずっと運転しているのでイニシャルコストもランニングコストも高くなりますが、冬において給気温度や湿度維持の面でも快適性が向上するので3種換気との単純な比較はできません。3種換気で「1種換気と同等の快適性」を求めようとすれば、冬は補助暖房や加湿器、夏は除湿機(あるいはエアコンのドライ機能をフル稼働)を併用する可能性が高くなります。コスト比較するのであれば、そういう装置のコストや維持費も加味する必要があります。


1種換気の全熱交換の概念図 : ケィ・マックインダストリーのaireカタログより抜粋

正確には1種換気の中にも顕熱交換全熱交換があり、顕熱交換の場合は、交換されるのは温度だけで湿気は交換されませんから、3種換気と同様に加湿器、除湿機が必要になる可能性があります。全熱交換の場合は多少なりとも湿気が還元されますから、補助的な使用で済むケースが多いです。洗濯物を室内干しするなど、生活上の工夫でそれなりの湿度を維持できるケースが多いです。

全熱交換:熱も湿気も交換する方式

 顕熱交換:熱だけを交換する方式。湿気は交換しないので、冬は過乾燥になりがち。

 

1種換気も様々な商品が存在しますが、ダクト式1種換気の場合は20万円~80万円ぐらいと性能や特性によってばらつきが大きいです。空調(エアコン)を組み込んだシステムだと150万円というのもざらにあります。

ダクトレス1種換気という商品もある。

ダクトレス1種換気 : VENTOsan  エディフィス省エネテックHPより引用

1種換気システムで考慮すべきこと

高いほど高品質、快適性が高いと考えがちですが、必ずしもそうとは言い切れません。
考慮すべきことをリスト化するならば、、、

  備考
堅牢性  
メンテナンス性  
・故障時の維持交換のしやすさ 故障して取り替えるときに、天井をすべて解体して入れ替えるような計画だと、機械以外の出費も発生してしまう。
臭気還元率 測定している会社と、メーカーや知人の経験則に基づいた定性的な評価でしか知り得ない場合がある。
・機械の経路にトイレや脱衣所、お風呂を入れられるか 経路に組み込めないシステムの場合、1種換気装置とは別に、個別の換気装置をつけねばならず、家全体で見たときの熱交換効率の意味合いが変わってくる。
・メーカーの熟知度や提案力 販売している商品の周辺のことまできちんと把握しているメーカーさんは心強い。
・メーカーが存続していく信頼性があるか? 仮にメーカーが無くなったり生産を停止した場合の対策を考慮しておくことも重要。
・換気経路に空調(エアコン)を組み込めるかどうか? 組み込まない場合、各室に十分な冷暖気を回すための配慮が必要。
・組み込める空調タイプは「壁掛けエアコン」なのか「アメニティ」なのか? 堅牢性を重視した業務用エアコンを入れるのか、最新のニーズがふんだんに盛り込まれた家庭用エアコンを組み込むのかも要検討。家庭用エアコンのほうが燃費(APF)が良い場合が多い。

補助換気装置室内循環ファンが必要か?

あるいは、除湿機、加湿器が必要か?

メインの機械単体の消費電力だけではなく、補助的につける機械の消費電力や騒音も考慮する。

、、、などなど、総合的に考えて選択していく必要があります。何よりもプランを考えていく段階で、「家全体のデザイン」と「採用したシステム」が一体となった空間を作り、快適性を最大化できるように配慮する必要があります。

住まい方によってもシステムは変わる

また、各ご家庭の住まい方によっても選択すべきシステムが変わります。

例えば、

在宅時間が短い共働きのご家庭」

と、

「在宅ワーカーや赤ちゃんやお年寄りがいる在宅時間が長いご家庭

では事情が異なります。

在宅時間が長いご家庭の場合、1種換気+24時間全館空調は、得難い快適性を享受できる可能性が高くなります。すなわちコスト換算しにくい恩恵が得られるということです。1種換気が全熱交換であれば、湿度の点でも満足レベルが高くなるはずです。一日の温湿度の変化が少なく、部屋ごとの温度差が少なくなり、穏やかな室内気候が形成されます。

もちろん高気密高断熱が十分なレベルに達していれば、3種換気方式+各室個別エアコン間欠運転でも快適性は得られます。ただし、空調が効き始めるまでに時間がかかってなかなか起きられなかったり、脱衣所が寒かったり、、、など家の中の温度差を感じることが多くなります。そういう意味でも1種換気+24時間全館空調というは快適性が高いわけです。

在宅時間が短いご家庭で、エアコンを間欠運転する場合は「家の蓄熱性」も考える必要があります。(全館空調を採用する場合は間欠運転する人はいないと思いますが、、、)
家の蓄熱性を高く設定しすぎると、家を出る頃にようやく部屋が温まってくる、、、なんてことになってしまいます。エアコンの熱が効き始めるタイミングが家の蓄熱性によって遅延します。特に床下エアコンを採用して床下を空調範囲に含める計画の場合です。

高気密高断熱はもはや前提条件という視点に立った上で、ライフスタイルに応じた設計が求められます。

なぜ、話が複雑になるのか?

さて、大変混み入ってややこしいですね。ネット上でも種々の主張や議論がなされています。なぜこんなに話が複雑になるかというと、下の表のように、設備とその種別、運転方法の組み合わせによって初めて空調・換気のシステムが成り立つからです。

4項目の各要素分の組み合わせ(4×2×2×2=32通り)だけでなく、換気方式の中には、「換気・空調経路内に浴室やトイレを組み込めるものと、組み込めないもの」、空調方式の中には「補助の室内間ファンがいるものと、いらないもの」など、、、、複数のファクターがかけ合わさります。

あるいはZehnder Comfohomeのように「エアコンと換気が一体となったシステム」なのか、「各設備をバラバラに組み合わせるシステム」なのかでも話が変わってきます。

また、家の断熱性能や気密性能が異なる場合、各方式の意味合いやシステムが成り立つ前提が変わってきます。もちろん日射取得、日射遮蔽など、窓の性能やサイズ、配置にも左右されます。

、、、というわけで組み合わせ数は膨大となり、百家争鳴のごとくネット上で無数の主張が入り乱れているのです。(しかも日本各地で気象条件も異なる。。。)

① 換気

種類

 

② 換気

熱交換方式

 

③ 空調

種類

 

④ 空調

運転方式

第1種ダクト換気

第1種ダクトレス換気

第3種ダクト換気

第3種ダクトレス換気

×

全熱交換

顕熱交換

×

各室個別エアコン

全館空調

×

24時間連続運転

間欠運転

 

ランニングコストと太陽光パネル(PV)


panasonicのHPより

コストアップの話がありましたが、冷暖房需要時のランニングコストは「太陽光パネル(PV)」の発電によってほぼ相殺されます。今なら都内であれば補助金も潤沢に出る(※1)ので、ランニングコストをまかないつつ、長期的にはイニシャルコストを回収できる可能性が非常に高いという試算がなされており、設置を検討すべきと言えます。PV(※2)は次世代の住環境を考える上で外せない設備であり、別稿で改めて書きます。

※1 2022年6月時点
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/home/dannetsu-solar.html

※2 PVPhotoVoltaic(フォトボルタイク)=太陽光パネル
   海外ではSolar PanelとかSolar Cellとは呼ばずPVという呼称が主流。

 

空調・換気における、メンテナンスのバリアフリー性について

文京区の千石にて、新築のお打ち合わせ。
お客様は大変高齢の方です。

この計画をきっかけに、高性能住宅には欠かせないファクターの一つである空調・換気のメンテナンス性について思案しています。

数ヶ月に一度、脚立に上って天井点検口を開け、エアコンや換気装置のフィルター清掃をするような計画は提案しづらい。。。いずれはメンテの頻度が落ちてしまう可能性が高いです。

バリアフリー住宅とはよく言われるキーワードですが、新鮮な空気と、温湿度が調整された空気が循環していることはとても大切なことですから、そのメンテナンスに障壁があってはまずいのです。ここでメンテナンスのバリアフリー性について考えてみます。

 

以下、考察。

例えば先程も申し上げたように、天井点検口だと脚立や椅子を運んでくるのもひと手間かかります。高齢になってきたら、脚立に登るのもおぼつかないかもしれません。デザイン上の工夫が必要ですが、天井高を1.9m程度の高さに設定することができれば、メンテナンスし易いと思います。


70歳になったつもりで、脚立に登って点検している自分を想像してほしい。
同時に、年金生活になって貯蓄を崩してまで専門業者に定期メンテの依頼をするだろうか?

一方、床の点検口だと、そこに物を置けません。
クローゼットの中の床下に点検口を設けたら、十中八九、いろいろな物が置かれることになります。床だから、それなりの重さとボリュームのある荷物を置いてしまうでしょう。
そして置いたら、移動させた上に、元に戻さなくてはなりません。
メンテのたびにできますか?


もちろん廊下にこれはありえない。せめてマットなどを敷く脱衣所の床やキッチンならありでしょう。
しかしながらパッシハウスクラスの高性能住宅のキッチンであれば、足の冷たさを解消するためのマットがそもそも不要。

あるいは、空調・換気のための専用の部屋、すなわち空調室を設ければ、地価の高い都心部ではもったいない空間の使い方になってしまいます。(費用対効果のバランスが悪くなる)また、そういう部屋は物置と兼用になるでしょうから、物がたくさん収納されたら、これもまたメンテ上のバリアになる可能性が出てきます。

あるいは、小屋裏エアコンという選択肢はどうでしょう? 実は行政によって法的な取り扱いの差があります。小屋裏への固定階段の設置を認める区と認めない区があります。固定階段があれば、比較的小屋裏に行きやすくなります。ところが、そもそも小屋裏へのエアコン設置を認めない区が多いのも事実なのです。
(小屋裏エアコンとは、小屋裏にエアコンを設置し、各部屋にファンで送風するという仕組みだが、行政区によってはそれを認めず、通達の運用により小屋裏という非居室空間に、快適性や居住性をもたらす要素をなくすべし、という前提がある。地方ではその辺がゆるく、実現しやすい傾向にある。システムのメーカーは小屋裏にエアコンを「置いている」という取り扱いで申請して対応しているケースもあると聞く。このへんは国の省エネ化の促進によって、その必要性から運用が変わっていく可能性もある。)

あるいは、床下エアコンという選択肢はどうでしょう?
これは床下空間をきちんと確保できれば、比較的メンテナンスがしやすく、法的縛りも少ないシステムです。何より床面温度が室温より高くなるという点を見逃せません。
ただし、冬季限定利用で、夏季に利用する場合は補助的な利用か、ファンをうまく組み合わせないと結露などのリスクがあります。
また、メンテナンスのために床下に適度な空間を設けるということは、基礎の作りが半地下となり、残土処分費の増大や基礎工事費などのイニシャルコストが上がるわけで、コストバランスが求められます。ここをクリアできれば、結構良い仕組みと言えます。
逆にコストを気にして狭い床下空間にしてしまうと、上述の通り、維持しづらいシステムとなってしまうでしょう。
※ちなみにパッシブハウスクラスになると室内気温と表面温度がほぼ均一になるので、床下エアコンにこだわらずとも温熱環境を維持できる。
※床下を地面下に掘り下げるのではなく、床上を持ち上げて空間を確保する方法もある。

こうして考えていくと、どの方法を選択しても一長一短あり、何かしらのメンテ上のバリアが発生します。それはすなわち快適性の維持がいずれ難しくなっていくことを意味しています。

高性能住宅に対して意欲のある若い世代の家族なら維持可能かもしれませんが、年齢が進めばどうなるかわかりません。将来的な加齢や、とかく怠けがちな人間の性からは逃れられないでしょう。そういうことまで配慮して設計しなければ、一体何がデザインされたのか?ということになってしまいます。

よって、どのシステムを採用するにしても、バリアとなるものを見極めて、それを解消する工夫が必要になります。

杉並区荻窪の家:縁側土間コン打設

だんだん暑くなってきました。

中庭に面する縁側空間の土間上にモルタルが塗られました。
縁側の基礎が建物本体からすこし隙間が空いていますね?
建物の基礎の外側には断熱材が同時打ち込みされており、縁側の基礎からの熱橋を絶縁するために離しているのです。

メッシュ配筋のかわりにバルチップという補強繊維をモルタルに混ぜて土間打ちします。
※セメントコンクリート用ポリオレフィン系補強繊維

針金の集まりにように見えますが、一本一本は柔らかいです。

決められた量を混ぜていきます。

職人さんも初めて使う素材のようで、えらく苦労されたようです。
ありがとうございます。。。

鉄筋の金額が上がっていますから、土木でよく使われるような製品も積極的に活用していきたいところです。

もし打設が終わってポリオレフィン系補強繊維が多少飛び出しているようなことがあっても、バーナーで炙ればなくなってしまうそうです。また、将来的に廃棄する段階でも一定の%以下の含有量なため、再生砕石としての利用が可能だとのことです。

気密測定講習

良好な住環境を作るためには、気密性確保がとても大事です。

お客様と話していて、
「昔の家のように適度に空気が動いている方がいい」
「気密を高めたら密閉されて息苦しくなるんじゃないか」
、、、みたいなことを言われることがあります。

でも、そうではないのだと一生懸命ご説明します。
気密性は高ければ高いほどいいのです。
意図しない隙間があって良いことは一つもありません。(この話はまた後日。)


荻窪の家の気密測定

東京都荻窪の物件で気密測定をしたのですが、さらに具体的な測定方法や気密性能の算出プロセスについて学んでみようと思ったわけです。


毎日の業務終了後にお勉強、、、した甲斐もあって、
7月14日に試験を受けて、8月29日に合格通知が来ました。

事業所登録、気密測定技能者登録すれば、気密測定が行える(性能証明書の発行)とのことでしたが、登録はせず。

自社物件の自社測定は、建築士の資格の名の元に行いますから、登録しなくても測定はできます。いずれは専門業者さんに外注せずに、自社測定にチャレンジしてみたいと思います。

PLATEAU(プラトー)

久しぶりにSketchUpユーザーグループのミーティングに参加しました。
本日のお題は「PLATEAU(プラトー)」
都市や街を立体化するのはなかなかハードルが高いです。
SketchUpとRhinocerosの両方で作成を試みましたが、とてつもなくデータが重い。。。

↑クリックして拡大

かなり試行錯誤しましたが、満足感ある出来栄えです。

テクスチャーは解像度が荒く、まだそこまでは期待できないみたいです。

PLATEAU(プラトー)というのは国土交通省が主導しているプロジェクトです。
日本全国の都市を3Dモデル化(データ化)しようとしています。

国土交通省が主導する、日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU」。データを活用するためのガイドやさまざまなシーンでの活用事例、最新ニュースやアプリケーションなど、PLATEAUに関する情報をお届けします。

我々建築の設計に携わる者としては、都市を3Dデータとして設計に活用するといったシンプルな使い方になると思いますが、応用できる範囲は広大です。

例えば津波の災害シミュレーションを元に避難計画を立てたり、都市計画やまちづくりに活かすといった活用が目論まれているようです。

ドローンによる配達が一般化した場合、経路の最適化に使われるかもしれない。あるいはドローンが飛び回れば、情報収集も同時におこなって、都市をリアルタイムで更新していくような仕組みも見えてきそうです。

グーグルアースが都市をグラフィックスとして立体化しているのに対して、PLATEAUでは建物や道路など、一つ一つが情報を持っている作り方になっています。都市をデータ化しているとも言えるでしょう。

LOD(Level of Details)という概念は、コンピュータグラフィックスが出てきた1976年頃からあるようです。

  • LOD1:建物の2D形状に高さ情報をかけあわせたシンプルな箱モデル
  • LOD2:LOD1に屋根形状を追加したもの
  • LOD3:さらに窓やドアの外構(開口部)を追加したもの
  • LOD4:建物内部までBIM/CIM等でモデル化したもの


PLATEAU特設サイトより引用

どこまで詳細度を高めるのか?という点については議論の余地があるでしょう。
LOD4レベルともなると、そもそも誰がデータ化するのか?
現場での頻繁な変更に対して、どこまで正確に反映させるのか?
部分的に改修工事をした場合は?、、、などなど。

正確性がなければLOD4の付加価値は薄れるわけで、LODのレベルが進むに従って、作成コストや維持コストは莫大になると推測できます。

とはいえ、様々な利用法を開発できる基盤として、データ化の意義は大きいと思います。

一般社団法人「あんしん解体業者認定協会」さんからインタビューを受けました

2020年の2月、一般社団法人「あんしん解体業者認定協会」さんから、弊社のインタビューをしたいとのお申し出を頂きました。

電話で担当者の山城さんとお話するうちに、お人柄に感じ入るところがあったのでインタビューをお受けすることにしました。

実際にお会いして会話を進める中で、まっすぐな社風や雰囲気、そして代表の鈴木佑一さんのフレッシュで透徹したビジョンも感じとることができ、この方達はとっても伸びていくんじゃないかなと思いました。

私は「あんしん解体業者認定協会」さんをとても応援したい気持ちになりました。

設計において考えていることは、この記事の内容ばかりではないのですが、普段から良く意識していることをうまく引き出していただいたインタビュー記事です。

記事の冒頭は、まるで匠(?)の紹介文みたいで恥ずかしいですが (笑
ご笑覧ください。

 

↓インタビュー記事はこちらです。

株式会社VITの黒澤社長によると、設計で人の密度を変えるだけでもコミュニケーションの機会を増やすことが可能だと言います。設計の力で空間や雰囲気も操作してしまう。一体どんな技術なのでしょうか。

 

↓一般社団法人「あんしん解体業者認定協会」さんのリンク先はこちらです。

すべてのお客様に「あんしん」な解体工事を 私たちは解体業界の透明化のために活動しています 2023年3月15日 川崎市と「解体一括見積サービスWEBサイトを活用した空家の除却促進に向けた実証実験に関する協定」を締結しまし…

 

「フジカケ」×「ケケノコ」コラボ!
ケケノコ闊歩in日暮里

去る2019年5月11日に、藤掛さんのグランドオープン前の告知イベントとして

ケケノコ闊歩in日暮里

というイベントが開かれました。
このイベント前後にはケケノコさん達を起用した告知写真などがネットに掲載されました。
ちなみに日暮里繊維街でこのような取り組みは初めてだそうです。

ケケノコというのは「新しいタイプの竹の子族」を目指す「ケケノコ族」のことです。
全国のイベントに出向いて企画を盛り上げたり、告知を拡散するのに活躍しているパフォーマンス集団です。派手で奇抜なコスプレとともに、音楽とダンスを組み合わせて街中を練り歩くのです。

こういうのを見られる機会もあまりないので、興味津々。

ケケノコさんたちは街中の練り歩いて、各ポイントでポーズを取ります。
周りにいる人たちは一斉にスマホで写真を撮ります。
すると、いろんなお店をバックにした写真が拡散する、という相乗効果が期待できます。

決めポーズ(写真タイム?)が終わると次のポイントへ向かい、音楽とともに踊りながら移動します。

藤掛さんの姉妹店、「フリカケ」のお店の前で決めポーズ。
皆さんそれぞれ決めポーズがあるようです。
過剰美」をさらに突き抜けたような独特の強烈さがありますね。
服をよく見ると鱗のような布とか特殊でしょう?
藤掛さんはこういう布も扱ってらっしゃいます。

そしてまた移動。
すれ違う外国の旅行客の方も、思わずスマホを取り出しています。

ちなみに日暮里はスカイライナーに乗って、成田から40分ぐらいで来られる場所です。そうした利便性もあって、訪日外国人が最初に立ち寄る場所になりつつあるそうです。
日本にしか無いような布を求めて世界中の方が来られるのです。
高齢化も進みつつある繊維街の商店は、外国語対応に四苦八苦しているとか。

わっせわっせ

皆さん息ぴったりです。

面白いことに、どの人もあえてそうしているのか、表情を作らずクールにパフォーマンスをしているのが印象的です。

そしていよいよ、藤掛さんの駅前店舗の入り口に来て、「決め!」

藤掛新店舗の中でも踊り始め、お客さんも何事かと騒然とします。
そうこうしている間に、皆さんSNSに上げたり、友達に写真を送ったりして拡散しているわけです。このへんが現代的で、ド派手な衣装とパフォーマンスは、SNS時代の告知拡散の仕組みと連動しているかのようです。

一通り、パフォーマンスが終わったらお店のど真ん中で最後の「決め!」
お疲れさまでした。

私が見ていて思ったのは、こういうパフォーマー達に協力を依頼して、
もっと「街のイベントと連動したキャラ」として起用したら良いんじゃないかと思いました。
地方の商店街など、潜在的なニーズがたくさんある気がします。

もちろん「練り歩きパフォーマンス」は一定時間で終わってしまいますが、
ネットでのイベント告知やポスターなどの印刷物と組み合わせたら、より印象的なアピールができそうです。

 

藤掛さんの関連記事

こちらもあわせてどうぞ

創業90年以上を誇る特殊生地の老舗、藤掛さんの本店・倉庫・本社ビル改修の意匠設計監理に携わりました。
藤掛さんの日暮里繊維街への移転を機に、銭湯を改修して「倉庫と事務所」併設の事業所をつくりました。

 

日立さんの「秋の庭園公開」

東京都国分寺市に日立製作所さんの中央研究所がありまして、年に2回、庭園開放が開催されます。広大な自然豊かな敷地内を一般開放をする日なのです。野川の水源にあたる場所で、環境的にも素晴らしいところです。ちょうど弊社のお客様の「きの実」さんからのお誘いもあり、家族で行ってきました。中央の広場の芝生スペースに様々なお店が出店しています。

ついつい色々買ってしまいます。

「きの実」さんも頑張ってらっしゃいます。お年寄りから子供まで幅広く興味を持っていただいているようです。お客様の空いた際にちょくちょく顔を出して、今後の展開とかアイディアを打合せ。

食べるのに夢中で、肝心の庭園散策もしなくては(笑
もうすっかり秋も深まっていることを実感。
子供は落ち葉の下のどんぐりと虫に夢中です。
ちなみにこの池には白鳥や鴨がいます。

帰り道の公園で

 

 


「きの実」さんの記事はこちらを御覧ください。

梅干しを中心とした健康食品を扱う「きの実」様の新会社への移行を機に、コンセプト構築、ロゴデザインをご提案しました。

錫 (すず) の器づくり ~経験や体験について~

以前から気になっていた錫を使ったワークショップに参加してみました。
東京都目黒区にあるMakers’ Baseという工房で開催している「錫酒器」作りです。4時間かけて下記画像のように左から順番に、丸く平たい錫の原板をたたいて、絞っていって小さなおちょこのような器を作ります。錫器 (1)

錫には水の浄化作用があるとかで、どんな金属だろうという興味があったのです。素材の性質を熟知したいと考えていたこともあり、参加してみることにしました。

結構体力を使います。・・・というより腕が痛い、、、。
何百回と錫を木槌や金槌を使い分けて打ち込みます。砂の入ったバッグを下地に、木槌でたたき続けると、だんだん湾曲してきます。錫は意外に柔らかいです。ここで入荷している錫は純度の高いものらしいです。
錫器 (3)

ひっくり返すと布地の模様が錫に転写されています。そのぐらい軟度が高いわけです。
(注:画像が少々ぶれているのは、何百回も打ち込んだせいで手がぷるぷるしているからです)
錫器 (4)

器がそれらしい形になった後、講師の方が内側から成形していく過程を実演してくれました。
錫器 (6)

丸みのある先端を持った鉄の治具を下地に、さらに外側からたたいて、外周部をすぼめつつ、
全体を気に入った形まで整形していきます。
錫器 (5)

鏡面をもった特殊な金槌をつかって、光沢のある表面へと変化させます。叩いてなめらかにするので、表面に独特の文様がつきます。打面を打った瞬間に横にずらすように(表面にすりつけるように)移動させると亀の子状の文様になります。
錫器 (7)
なんとかそれらしい形にまで整えました。丸い原板を無理矢理すぼめて器の形に整えますから、当然エッジは広がって、ぎざぎざになっていきます。つくる人によって力の入れ方、全体のバランス感覚などが形状に表れてくると思います。
錫器 (8)

ここから「やすり」や「しごきベラ」をつかって先端を整えていきます。参加者全員くたくた。女性には少々キツイかもしれません。
錫器 (9)
やすりで大まかにエッジを整えます。先端がだんだんコンロの炎の揺らぎのように見えてきたので、そのニュアンスをさらに強調することに決定しました。
錫器 (10)

3時間半ぐらいで大まかに完成しました。最後は打刻して自分の名前など好きな文字を刻印できます。ところが刻印がものすごく小さいため、どの刻印がどの文字なのか判別することも難しい、というぐらい小さいです。ようやく文字を探し出して、底に打刻して完成。
錫器 (11)

それらしく「火焔酒器」と名付けました。
錫器 (12)

いつからか、こういった経験や体験を重んじるようになって、工場見学やら体験セミナーに頻繁に行くようになりました。

コンピュータがいずれは人工知能をほぼ完全に手中に収め、知識をさも体験したかのように絶妙の言葉の組み合わせで我々に語りかける日が来ると思います。人間が本やネットで得た知識には限界があり、コンピュータにかなうはずがないと、プログラミングをかじってから、さらにそう思うようになりました。ひとたびプログラムが正確にできあがれば、疲れ知らずで、寸分の狂いもなく、プログラマーが考えたことを再現できるので底知れぬ力を感じます。

しかしコンピュータはプログラムした人の「認識」という枠組みを超えることはできませんし、莫大な情報から言葉を紡ぎ出せても、「組み合わせ」という枠組みを超えられない。

だとすると体が経験したこと、リアルな現場で感じたことは、コンピュータにはできない創造の源となるはずです。なぜならコンピュータには体が無いので「体験」「経験」ができないからです。

いつの時代も価値を最終的に決めるのは人間だし、新しい価値の枠組みを創造するのも人間。
そういった直感が走った時から、このような「体験」とか「見学」を大事にするようになりました。

オスカー・ニーマイヤー展 / 村野藤吾の建築展

お盆の少し前から怒濤のように仕事が舞い込んできたのを何とかひとまず完了させ、たったの一日だけど休日を満喫。先輩と共に一日で2つの展覧会を回る予定。
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東京都現代美術館

ブラジルの近代建築の巨匠、オスカー・ニーマイヤー展。
1907年生まれ、2012年に亡くなられた。104歳で病床に伏してもまだ夢を追いかけていたとか。私もそうありたいものだ。

東京都現代美術館は木場駅からも清澄白河駅からも遠く、中途半端な距離だ。
しかしそれにしても、とろけるように暑い!まずは館内の喫茶店で一休み。
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パンプーリャ・ヨットクラブ

この展覧会で一番建築的に惹かれたのはこれ。
パンプーリャ・ヨットクラブ

よく見ると梁がモーメントに応じて断面が変化している。
片持ちの先端は細く、支点付近は梁せいが大きくなっている。
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会場内で流れているビデオを見て思った。
構造力学のロジックはニーマイヤーにとって欠かせないツールだったはずだ、と。

無邪気にスケッチを描いても、現実化しようと思えば、最終的には必ず幾何学的秩序や構造的な裏付けを持たせる必要が出てくる。構造家に依頼をかけていたとはいえ、本人にも力学的な素養がないと、このような有機的な形態は制御しきれない。

例えば、片持ち梁に等分布荷重がかかると断面二次モーメントは2次曲線を描く。その曲線に沿って構造を作れば、理に適った形態になり得る。こうした構造的に自明の理を援用し、己の理想とする形態や美的観念に重ね合わせるのは自然な流れであったに違いない。

有機的形態、自由曲線といった滑らかなカーブを多用した形態というのは、その全体を制御することが難しい。暴れ馬のような自由形態に秩序を与え、空間を束ねるツールとして、構造が重要な役割を果たしていたと思う。

もちろん、自由曲線が沢山出てくるのは土地の広さに余裕があるという諸条件だけでなく、多少のコストアップも許容してしまうようなおおらかな時代背景、そして政治的バックグラウンドがあったことも関係しているはずだ。そんな中で彼のデザイン様式は醸成されていったということも頭に入れておく必要がある。
※曲線は設計も大変だが、施工も非常に手間がかかるので、ものによっては莫大なコストがかかる。ましてや自由曲線ともなれば、ほいほいと描くわけにはいかない。

断面や立面では比較的わかりやすく理解できた。構造的なロジックが一貫していたからだ。しかし一方で、平面は別のロジックが並行して走っていると感じた。敷地との対話を進める過程で、伸びやかな空間を無邪気に追求したような自由さを感じた。

 

ダンスホール

ダンスホール

ブラジリア大聖堂

ブラジリア大聖堂

ブラジルは、もともとポルトガルの植民地だったこともあり、ポルトガルの影響を強く受けている。その後、複雑な歴史的経緯を辿った。多民族で構成されたブラジルを近代化していくにあたり、新たなアイデンティティを確立する必要が出てきたため首都移転が実行された。その際、他国の建築様式をそのまま持ち込むような事を良しとせず、全く新しい独自のスタイルを築き上げようとした
※1956年にクビシェック大統領は、「50年の進歩を5年で」というスローガンを掲げ、1960年にはリオデジャネイロから新首都ブラジリアへと猛スピードの遷都を成し遂げた。

近代建築は計画性や合理性といった側面が強調され、普遍性を求めるような文脈が存在する。しかし逆に個人的で恣意的な美学や感性の拡張が、国家や都市のアイデンティティを形成したという歴史を作った。つまり、通常とは異なる普遍性へのアプローチもあり得るということが示されたわけだ。もちろん結果的にある種の普遍性を獲得したわけだが。

もっと建築は自由になれるだろうか?

もう一歩進めて、どうやったらもっと建築は自由になれるかな、と夢想する。最近はニーマイヤーやザハのような、建築の形態のおもしろさや自由さにあこがれても、いざ建築する段階になれば、コンテクストを壊すだの、景観への配慮が足りないとか、税金の無駄遣いだとか、エネルギー効率がどうだとか、余計なコストは限界まで下げろとか、、、もっともらしい言葉が幅を効かせる。そして新しいアイディアや独創的な理想の実現化はますます難しくなっていく。特に日本ではそのような傾向が強いのではないか?自由な表現や試みを受け入れ、みんなで新しいことにチャレンジしてみよう、という文化的な懐も土壌も少ない。ますます窮屈になるばかりだ。

こういった状況が何をもたらすか?

建物はそれらしい説明を隠れ蓑に、異常に細かい法体系や些末な計算を繰り返す果てに、設計者のささやかな表現の領域をかろうじて残すような臆病な建物ばかりが増えることになる。そして小奇麗な説明に執心しなければ、社会的にはじかれてしまいかねない、、、そんな危うい時代に突入したとも言える。

だからこそ建築家はコストや効率に代わる新しい説得力をもった「時代の言葉」を創造する必要がある。これこそが日本の建築界の最重要課題だと感じている。

そうでなくば行き着く先はただの空っぽの箱である。

ニテロイ現代美術館

この展覧会では展示方法でも新鮮なことが2つあった。例えばこの模型。建物部分の模型もさることながら、地形としてつくられているスタイロフォーム。スタイロを何層にも重ね合わせた後、3Dデータを基に、機械で削られている。一直線に走る無数の平行な溝があることからそれが分かる。(層状に見える線はスタイロ一枚一枚の線だが、その一枚の中にさらに無数の線が入っている。写真では見えないかもしれないが。)
ニテロイ現代美術館

イビラプエラ公園

そしてもう一つはこの大空間の展示。1/30の模型と共に空間一面にカーペットが敷かれている。
イビラプエラ公園

よく見るとパイル地に細かくGoogle mapの航空写真がプリントされている。パイルの根本まで印刷されており、感心しきり。

鑑賞者は靴を脱いで敷地内を歩き回りながら模型を覗いて巨人になったような感覚である。
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先ほどの敷地模型にしてもこのカーペットのプリントにしてもそうだが、新しい技術が展示の鑑賞体験を拡張している。
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展覧会が何かを「鑑賞」するというフェーズから、「体験」するというフェーズに移行していくような試みだなあ、と思った。
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村野藤吾の建築展

続いて目黒区美術館にて村野藤吾の建築展。模型と図面の展覧会だ。
目黒区美術館
80点ほどの模型が展示されている。どれも細かくディティールが表現されている。ゴールデンマットに均一の力で繊細にカッターの刃を何千回と入れて、タイルや煉瓦を表現している。気の遠くなるような作業時間と労力を推し量らずにはいられない。

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村野藤吾の自由さと秩序を同時に追求していくような建築は惹かれるものがある。
撮影可能だったのは比較的大型建築ばかりだったが、敷地に自由に触手を伸ばすような自由な感じの作品も沢山あり、なかなか見応えのある模型展だった。
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目黒区役所

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建築談義

最後は新宿で飲みつつ、HERMITというBARに立ち寄り、終電まで建築談義。
店長のお気に入りの秘蔵の15年物のVIRGIN BOURBONをいただいた。独特の芳香があって旨い!この芳香は10年物にも21年物にも無く、なぜか15年物にしかないそうだ。

さ、また明日から頑張りますよ!
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おしまい。