東京都練馬区上石神井に計画した、超断熱の家:「素敬の家」の内覧会のお知らせです。
内覧をご希望される方は、「氏名、ご連絡先、希望日時」をお書き添えの上、
riokurosawa@vit.archi
までご連絡ください。
▽下記のリンク先をクリックしてダウンロード
「素敬の家」 内覧会のご案内.pdf
VITの日々の活動や、超高性能エコハウスに関する情報を発信しています。家づくりにとって大切なことを丁寧に解説いたします。
東京都練馬区上石神井に計画した、超断熱の家:「素敬の家」の内覧会のお知らせです。
内覧をご希望される方は、「氏名、ご連絡先、希望日時」をお書き添えの上、
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上棟式を行ないました。
朝晴れのいい天気ですが、午後には強風来襲の可能性があるそうで、、、。どうなるか?
すでに風が強く、現場では緊張感が走ります。2日前の強風時にはシートが風を受けて足場が少し浮いたとのこと。屋根に掛けていたブルーシートを剥いで、作業が始まります。
角部の複雑な処理をしつつ、登り梁の間に断熱材を落とし込みつつ、24mm合板が敷かれます。見えにくいですが気密処理のため、24mm合板と桁の間に気密テープを挟んでいます。
プレカットされたジャストサイズの断熱材を落とし込みながら24mm合板を貼っていきます。
午後の強風来襲に備えてブルーシートの準備をしつつ上棟式の準備をします。
家族で出席し、1階の建物の四方にお清めをします。
お米とお塩、お酒を撒きます。
私はお酒に蟻が寄ってこないか?、塩で金物が錆びないか?とヒヤヒヤでしたが、、、ただ日本古来の美意識も感じました。今まで何度も体験していることですが、自宅となると意味合いが少し違いますね。
、、、で工務店社長、監督、大工さん、家族の全員で無事、上棟式を終えました。
ところが、、、天気予報通りではあったのですが、、、ものすごい風が吹き始めました。
シートがめくれ上がること、めくれ上がること。
10m以上のスパンのシートが一気に持ち上がります。
桟木を打ち付けてめくれ上がりを防ぎます。
材料というのは家を作る部材になるだけでなく、作る過程でも活躍します。
シートが大きく膨れるので、どうやってシートを貼るか協議中です。
完全にブルーシートに覆われた建物の中はこんな感じになります。
あんまり見たことないでしょう?
シートの下に、斜めにロープを貼っているところですが、これを設置しないとシートの上に雨水が溜まってしまいます。雨水が貯まるだけなら良いですが、シートが雨水の重みに耐えられなくなると、一斉に室内に水が流れ込んでしまいます。
ロープを貼ることでシートに雨水が溜まらないようにしているのです。
—
超断熱とはあまり関係ない内容になってしまいましたが、建物を作るということはお天道様との調整の連続でもあり、家の本来の役割や意味とは何なのか?ということに気付かされます。我々が普段住んでいる住まいで、天候が荒れても不安にならずに済んでいるのは、家が自然から守ってくれているからなのですね!
そして超断熱の家が目指すのは天候を守るだけでなく、都心の過酷な条件から、家族を守ってくれる家でもあります。
埼玉県の飯能の製材所に行って、お話をいろいろ伺ってきた。
かねてより、どうしてもほしいニュアンスと材木の使い方に関する方針があったのだけど、工務店、そしてその先にある問屋を通してニュアンスを伝えても、なかなかうまくいかなかった。
そこで実際に製材所に電話して、アポどりして訪問してみた。
高齢の方であったが親子で経営されているそう。
至るところに製材後の板が積み重なって乾燥されている。
樹皮の皮むき機
水圧で樹皮を剥くので、向き終わった後の材木の表面はつるつるしている。
中には、時代の変化とともに使われなくなって、もう売れないとわかっていてもいろいろな材料が所狭しと積み重なっている。
材を挽くと、それなりの厚さになるが、それを更にカンナを掛けて3mmぐらいの薄さに加工しているものもある。
あ、、、この天井の野地板の感じ、、、
(昭和はこういう材の使い方が一般的だ。)
皆さんは小汚い、粗末なイメージを感じるかもしれないが、要は使い方だ。こういう荒々しいニュアンスを現代的にうまく取り入れたいと思っている。
木材を大事に使う。
余すことなく、無駄なく使う。
というコンセプトを実現したい。
無駄なく使い切ることで立ち現れるニュアンスがほしい。
そのニュアンスとは、言ってみれば新しい合理性による美だ。
普段あまり見ないようなところだから、工場も社長のお話も新鮮だったな。
埼玉県の某所で、夢建築工房さん主催による「再販リノベ勉強会」が開かれました。
「再販リノベ」とは、簡単に言えば古い家をリノベーションして販売するということですが、通常のリノベとは意味が異なります。今後の住宅業界の展望を見据えての、新たな住宅業界の戦略です。参加者全員が感度の高い人ばかりで、工務店、設計事務所、メディア、コンサル、不動産などいろいろなジャンルの方が集まりました。
断熱施工がまだ未完成の現場ですから、みんな凍えながら、夢建築工房の岸野さんの取り組みや展望、戦略を伺いつつ、現場を見ながらの勉強会となりました。
そして、メインゲストのプレイス・コーポレーション 浜田さんによる再販の事例や取り組みをお聞きしつつ、その後、質疑や活発な意見交換が行われました。
再販リノベの優位性とは、、、
新築よりも5、600万ぐらい安く販売できるということ。
一般的な新築の建売を超える性能を確保しながら、建売には手が届かないような魅力を盛り込んで、新しい市場を作り出そうというものです。これは可能性があると思います。
その魅力とは、例えば高い断熱性や防蟻性、耐震性、自然素材ならではのデザイン性などを指します。
注文住宅とも建売とも異なる、新しい価値の創出です。
再販のスキームには独特のプロセスがあり、経験や仲間も必要ですが、構造計算や温熱計算といった業務を日常的にこなす工務店や設計事務所にはスムーズに入っていける内容だと思いました。
弊社は昨年から耐震診断や改修にも力を入れはじめましたが、まさにそういった方向性の延長上にある話でした。
私の予想では2030~2035年前後を境に新築とリフォームの比率が逆転するのではないか?と考えています。その時、再販リノベは、単に家の部材を更新したといった枠組みを超えて、消費者に入手しやすい形でご提供できる道筋だと感じました。
全員が未来の可能性を感じているからだと思いますが、真剣そのもので、大変有意義な時間でした。
超断熱の家:上棟2日目です。
3階の床の施工に突入。
下に床が凹んでいるところはルーフバルコニーです。
ここで工務店の社長も参戦。
この物件で最も肝の一つである、「斜め上り梁」に施工に加わっていただきました。
工務店社長が来ると、現場の気合いや雰囲気が変わるのを感じます。
吹抜空間の大梁もかかり始めました。
敷地が台形のため、斜め梁に直交して登り梁がかかる、というイレギュラーが生じます。
左側が9.49寸勾配、右側の屋根が6寸勾配です。
24mm合板を屋根全面に貼って、屋根の水平構面を固めます。
梁はすべて斜めカット加工されて、合板がピッタリ載るように計算されています。
恐る恐る屋根の上に登ると、ひいいい、怖い。。。
今回の立地の場合、年間を通じて6寸勾配の時、太陽光パネルが最もバランス良く発電する角度になることを確認した上で屋根勾配を決定しましたが、この角度は上に登ると結構怖いです。
職人さんたちがひょいひょい登っているので、すごいなあと思います。
ルーフバルコニーを見下ろしてみました。
、、、怖い、、、。
2階リビング・キッチンからの見上げです。
設計の意図通りの内観になりそうです。
東の朝日を取り入れつつ、空を切り取る窓を想定しています。
(本件では実験的に東面だけ、外付けブラインドを設置します。
不要であれば開け閉めしないで、必要とあらば南面にも設置します。)
ちなみにパッシブ設計では東西の太陽は要注意とされています。
夏における、室内の高温化、及び冷房負荷の増大につながるからです。
でも、VITにとって、朝日をしっかり取り込むことは、大事なデザインの一つです。
朝日は一日のはじめに太陽からもらえる「元気の源」です。
今日も一日がんばるぞ!って気分になります。
弊社にとっては、こういうことも大事なんです。
「温熱基準」を満たば、それで良いわけではないんです。
—
そろそろ日も暮れ始め、本日の工程を終えてブルーシートを掛けます。
こういうのを「養生」といいます。
体を休めることを「養生」と言いますが、「現場をいたわる」という言葉でしょうか?
昔の人のネーミングは含蓄があります。
ちなみにこの家は耐震等級5相当です。
すなわち建築基準法が定める強度に対して、2倍の強度があります。
100年耐久の家を目指すなら、このぐらいの強度がほしいです。
(もしくは耐震等級3+制振装置等)
国の基準は「倒壊しないこと」を目指して体系付けられていますが、
弊社は大震災後も「住み続けられること」を主眼においています。
続いて屋根、床断熱の1層目の断熱材である、ミラフォームλ(ラムダ)を入れていきます!
東京都 練馬区 上石神井に、VITの事務所兼用住宅をつくります。
(固有名称:「素敬の家」)
目指す建物の性能は超・高気密高断熱。
断熱材を限界まで活用して、良質な温熱環境を構築します。
—
さて、、、早朝7:30。「建て方」が始まりました!
「建て方」というのは家の骨組みを組み上げる工程のことです。
前日までに土台と足場が組まれました。
都心は電線の密度が高く、立地が狭いので、ブームが90度曲がる、特殊なクレーンで木材を搬入します。電線を飛び越えて資材を運び込んでいます。
緑道沿いの土地です。この立地に惚れて土地を購入しました。
土地探しに5年かかりました。
梁や柱には番付けがされており、図面を見なくても、部材に書き込まれた記号だけで判断して、組み立てられていきます。
担当いただいたプレカットの担当者曰く、「過去一、複雑な架構」とのこと。
それもそのはず、数々の制約を乗り越えて、ここまで来ました。
設計は4年かかりました。詳細は後日、書きますね。
ちょっとした掛け声とコミュニケーションでテキパキ建て方が進行します。
2階の床合板に突入。
この建物は高気密・高断熱なので、気密工事を並行して行なっていきます。
上棟後に気密工事をする部分もあるため、合板を仮留めしていきます。
「超断熱の家」の肝である断熱材も到着しました。
これは屋根断熱、外気床断熱の1層目の断熱です。
複数層の断熱材を重ねていきます。
気密部材のWÜRTH(ウルト)も到着、開封。
現場で取り付けの段取りを大工さんと確認します。
2階の柱を建て終わり、2階の小屋梁に突入。
陽が傾いてきました。
この建物は在来工法ですが、部分的に金物工法をミックスしています。
弊社はこのやり方を採用しています。
100%在来工法とか、100%金物工法ではなく、部位の特性やコストに合わせて適材適所で、金物をミックスします。
コスト的にも有利で、部材の合理的な選択に繋がります。
今回は気密工事を並行して行うこと、架構が複雑であることを加味して、監督の意向により2日に分けて上棟を行うことになっています。幸い晴天が続きそうなので何よりです。
日も暮れて一日目の作業が終了です。
無事故で終わって良かった。それが一番です。
さあ、明日、本丸の屋根工事です!
※ 本稿は1種換気を否定するものではありません。熱交換による冷暖房負荷の低減や、除湿負荷の低減、冬の給気の不快感が減るといった魅力があります。
いろいろな側面を理解した上で選択していただきたいな、と思います。
最近、1種換気が流行っております。
ネットでもyoutubeでも「1種換気が良い」「いや、3種が良い」など、コストメリットやメンテナンスの観点から様々な意見が飛び交っています。その熱効率の観点から「1種でなければ高性能とは言えない」といった風潮や、「魔法の箱」だと考えているのではないか?と思える時もあります。
1種換気の話ではないのですが、実際に弊社が遭遇したケースについて、示唆的な内容でしたので、書こうと思います。
新規の設計のご依頼を頂いたお宅は築45年。
当時、大手のゼネコンから独立された方が設計した住宅でした。
かなり気合の入った設計で、当時では珍しかったと思いますが、セントラルヒーティングが入っていました。昭和52年ですから、45年前の住宅です。
冷温水循環ポンプからのパイプが1、2階に家中張り巡らされている設計です。当時としては、とても快適な家だったのではないでしょうか。いたるところにファンコイルユニットやパネルラジエーターといった放熱器が配置されています。
こうした家ができるということは、建築家のみならず、施主様も相当の気合で臨んだと思われます。
しかしその後、施主様(お父様)が亡くなられた後、このシステムについてわかっている方が誰も居なくなってしまいました。
しばらくすると、機械のここが壊れ、あそこが壊れ、、、。業者のツテも無く、、、かといっても特殊なので、業者を呼んでもどうすればいいか分からない。
、、、で、次第にそのシステムを使わなくなったそうです。
奥様もお子さんたちも一線で働いている年齢とはいえ、建築とは無縁の方たちばかり。
だから業者への適正な依頼方法も分からず。。。(当時はインターネットも無い)
とうとう、自分たちで業者に依頼し、ガスコンセントを設置。
そして、ガスストーブをいたるところに置くようになりました。
断熱性が低かったので家が寒すぎて、エアコンでは追いつかなかったわけです。
そして、夏が暑くなってくると、今度はエアコンも入れることになったそうです。
※これが「断熱性が低いと設備依存型になる」ということです。
試しに、仕様書に記載されている設計事務所、設備事務所、商品名を片っ端から検索しましたが、一つもヒットしません。つまり、もうこの世には設計者もおらず、商品の会社も部品も存在しないわけです。
比較的シンプルな作り方の場合は、簡易な改修で設備を入れ替えられるでしょう。
しかし、配管やダクトが家中に張り巡らされていると、天井や床をすべて壊すようなレベルの改修でなければなりません。
「そこまではお金ももったいないし、別の場所にわざわざ移ってまで、、、」ということで、残された人たちは、その時点で普及している設備をどんどん入れてしまいます。
こういった状況が1種換気装置にも起きる可能性があるわけです。
皆さんが、いい家にしようと、一生懸命勉強し、性能や機能を十分に理解して1種換気を採用するとします。
そういう施主様であれば、メンテナンスや部品確保の問題は、ある程度クリアできます。
そして3、40年後、、、今度は子どもたちが引き継ぐ番となります。
果たして、お子さんはその意味を理解した上で引き継げるでしょうか?
その時点で設計者が存命でしょうか?(あるいは施工会社が存続しているか?)
メーカーが40年後に存続していない場合、代替品や部品はあるでしょうか?
入れ替え工事を施工できる業者さんがいるでしょうか?
こうした、いくつもの条件が揃って初めて、維持・更新できることになります。
この「承継性」とでもいうべき側面は、換気装置の大切な性能の一つです。
熱交換効率のように数値化できるものだけが性能ではありません。
1種を選択して家を建てようとされている方は、今一度、ご家族でよく話し合ってください。長期に渡って住み続けられる家を目指す場合、この点が大事だと私は思います。仮に1世代だけであっても、3~40年以上は維持しなければならないのです。
こういう前提を理解して細心の注意を払った設計にしないと、いつのまにか使われていない「大量のダクト」と「機械」が埋設された家になるかもしれません。
ヨーロッパでは規格化が進んでいるので、他のメーカーの製品に入れ替えやすいという特徴があります。日本の1種換気装置は規格化されておらず、各社が独自に製品を作っています。ですから、他メーカーの製品に取り替えにくいのです。もし、30年後にそのメーカーが存続していなくて、類似の形式の装置がなかったら、、、。
反対にエアコンの場合は、日本では広く普及していることもあって規格化されています。だから、他メーカーのエアコンに簡単に入れ替えられます。
ここまで知ると「やっぱり環境先進国、ヨーロッパの1種換気だよね!」となりそうですが、
とってもいいお値段。。。
ちなみに、商品にもよりますが、
モーターの耐久性は10年程度、
熱交換素子は10~15年程度。
モーターに負荷のかかりやすい設計だともう少し寿命が短くなるかもしれません。
経済産業省の決まりで、メーカーは部品を6年間は保管しておくことになっているそうです。ですからメーカーの情報をもとに、壊れそうな部品を先行入手しておけば安心と言えます。海外製の場合は、有事があったり、方針が変われば簡単に供給がストップする可能性もあるため、海外製品の導入は準備万端かつ慎重に!
1種換気と3種換気についての比較考察です。こちらも併せてご一読ください。
理論値の追求も設計上、大事なのですが、 実測や実験によって理論値を補正したり、新たな知見を得ることができます。 今回のお題は「パイプファンとダクト」
換気装置は三菱のV-08PM8 : 風量75m3/h 18db 消費電力1.8W
2、3m離れていれば、音が鳴っているのかどうかわからないぐらいです。
耳元に近づければ小さく「ブォ—–ン」という音はします。
深夜でも試しましたが、裸の状態であれば、2,3m離れていてもモーター音はわずかに聞こえ、、、と言っても限界値に近いような音。
気にならない人は気にならないようなレベルだと思います。
音は個人差が大きいので難しいですね。
(だから最終的には、ファンをクローゼットの中に仕込みつつ、さらに防音の箱で包んで、ほぼ無音と言えるレベルになるように設計します。)
それに接続するダクトは、クラレプラスチックスさんの
「コンパクトールK」
「断熱ダクト」
です。100Φのダクトサンプルを送っていただきました。
白い半透明のダクトが「コンパクトールK」
銀色のフィルムで包まれているのが「断熱ダクト」です。
この組み合わせでの実測です。
目的は、パイプファンに対する風量の圧損。および出口の音についてです。
順番に見てきましょう。
弊社では空調・換気計画における5つの方針があります。
1:シンプルな空調・換気計画にすること |
2:低消費電力を実現すること |
3:簡易なメンテナンス性を確保すること |
4:維持・更新が容易なこと |
5:静粛性に配慮すること |
今回は5番目の「静粛性」を検証するものです。
住宅では寝るときに「音がうるさい!」ということで、換気の電気を切ってしまうケースがあります。その結果、寝室の湿度が高まり、冬場は窓の結露が生じやすくなります。最終的にはガラス回りのパッキンのカビに繋がっていきます。また、換気不足からCO2濃度が高くなるので、睡眠の質が落ちます。
つまり、音と換気の問題は「両刃の剣」の関係にあるわけです。
ちなみに、今回はデシベル計は使いません。なぜなら、換気装置が18dbの騒音値なのに対して、一般的なデシベル計の計測可能な最小値は30dbだからです。
(高性能な高い機械でも25dbが限界です)
、、、じゃあ、30db以下なら無音か?と言われれれば、そうではありません。
人間の耳は高性能計測器以上に繊細です。
18dbだってちゃんと聞こえます。
寝静まった深夜であれば、確実に聞こえます。
こうした30db以下の音を、どれだけ制御できるのか?、、、
それは「睡眠の質」に関わることなので、住宅設計においてとても大事なことだと考えています
指で触るとツルツルしています。らせん状のワイヤーだけが凹凸として感じられます。ツルツルしている分、音の反射が良いのか、パイプファンの音がほとんどそのままダイレクトに聞こえます。直線でもU字型に曲げても、音の聞こえ方には、あまり差を感じませんでした。ツルツルしている分、ホコリが溜まりにくそうですが、凹凸部には多少ホコリが引っかかりそうです。
スパイラルダクトよりは凹凸があり、
じゃばらダクトよりツルツル
、、、といった印象です。
持ち上げた感じでは、気をつけて施工すれば、極端に潰れることもない、といった強度がありそうです。
都心ではまだまだ、職人さんも慣れないため、スパイラルダクトに対する抵抗感が強いらしく、ビビリ価格で見積もりが出てきがちです。でもこれなら抵抗感なく施工できるんじゃないでしょうか?
こなれた強度がありつつ、硬すぎることもなく、持ち上げても「ぐにゃっ」と折れなかったので、扱いやすそうです。フレキシブルダクト(アルミのじゃばらダクト)のように、潰れたら元に戻らない、という感じでもないです。
表面がアルミ蒸着フィルムなので光を通さず。
内部は不気味な抽象画のような感じ、、、。
パイプファンの運転の最初は、断熱材の匂いが多少しましたが、時間とともに気にならないレベルになりました。この点は問題なさそうです。
出口では音がそれなりに聞こえますが、コンパクトールKよりは明らかに音が小さいです。出口から50cmも離れれば、わずかに聞こえますが、2、3m離れればほぼ無音と言えます。この音の差はかなり大きい印象です。(計測器では計測できないレベルなので感覚的、定性的にしか表現できません。私はかなり耳が良い方なのですが、私の耳でOKであれば、大抵の方はOKと言えるレベルだと思っています。)
内側は不織布のような膜で覆われており、表皮の多孔から音が入りこみ、外側に巻かれた断熱材に音が吸収されます。
音は劇的に小さくなりましたが、ホコリはコンパクトールKに比べて、引っかかりやすくなる印象です。したがって、住まい手が自分でダクト内を掃除できるぐらいの長さであれば、静粛性と簡易なメンテナンス性を両立できそうです。
例えば室間ファン、階間ファンなど、1m以下なら、両側からホコリ取りのモップを入れて、自分で掃除できそうです。
1種換気などで使用する場合は、相応の長さを使うことになるはずなので、汚れてきた場合は、ダクト清掃業者さんにお願いする必要がありそうです。現時点ではダクト清掃といえば、ハードルが高いように思えますが、1種のニーズが高まってきているので、将来的にはダクト清掃業者さんも増えて、リーズナブルに清掃依頼ができるようになると思います。ですから、ダクトを這わせることを極端に嫌う必要はないと思います。(ヨーロッパでは、煙突掃除屋さんが、職能の延長ということでダクト清掃を行っているそうです。)
しかしながら、プロに依頼するにしても、極力スパイラルダクトを使った計画にし、端部に吸音ダクトを使うことで、「施工性」「吸音性」「メンテナンス性」を両立するのが望ましいと思います。また、スパイラルを使うほうが圧力損失が少なく、その分ファンの駆動力を抑えられるため、消費電力が下がります。
これは今回のパイプファン、
三菱のV-08PM8のP-Q曲線です。
機外静圧0Paで75m3/h。
(つまりダクトなどによる圧力損失がない状態の送風能力)
「コンパクトールK」「断熱ダクト」を通過すると風量がどうなるのか?
やってみましょう。
コンパクトールK、断熱ダクトともにサンプルの長さは2.17m。
U字型に曲げた場合と直線状の場合で、それぞれ実測しました。
U字型では、直径1.4mぐらいの半円状の曲率で計測しました。
コンパクトールK 100Φ 2.17m
直線2.4m/s→ 68m3/h P-Q曲線より、4Pa → 圧力損失1.84Pa/m
U字型2.2m/s→ 62m3/h P-Q曲線より、6Pa → 圧力損失2.76Pa/m
断熱ダクト 100Φ 2.17m
直線2.3m/s→ 65m3/h P-Q曲線より、5Pa → 圧力損失2.30Pa/m
U字型1.9m/s→ 54m3/h P-Q曲線より、8Pa → 圧力損失3.68Pa/m
(上の写真)
という、結果となりました。
スパイラルダクトよりは圧力損失が大きいですね。
しかしながら扱いやすさ、吸音性などの魅力があります。
今後、曲率を変えた場合の圧力損失も計測していきます。
深夜の音は確かに小さく聞こえましたが、家族が寝静まり、家中の音が無くなった状態だと、ファンの音しか騒音源が無いことになり、ファンの音が際立つことが判明。(と言っても微小音)
押し入れに仕込みつつ、ダクトと繋がっているので、クローゼットの扉はダクトの直径分は開いた状態ですが、この状態で寝てみることにしました。
ちょっと気になるかなあ、と思いつつも眠りに入りましたが、夜中の3時に目が覚めました。
すると、クローゼットの方から
ブ・・・・・・・・・・・・・・・・ン
こ、これは、、、!
ダクトの消音性はともかくとして、無音に近い深夜だと、モーター音が結構気になります。三菱さんが「わずか18db。業界トップクラスの静音運転」と謳う素晴らしい商品ですが、無音に近い深夜ならば確実に聞こえてしまいます。寝室とあらばなおさらです。コンセントを抜いたら、静かになって、あっという間に眠りにつきました。
寝室のエアコンはついたり、止まったりを繰り返しているのですが、エアコンが止まったときに目が覚めたのでした。エアコンが動き出すとこちらの音の方がはるかに大きいです。風のそよそよ音や、モーター音にゆらぎがあるからなのかはわかりませんが、あまり気になりません。どうやら音の大きさだけでなく、音の質によって、体に緊張をもたらすものとそうでないものがあるようです。その辺は学者さんにおまかせするとして、この問題を現実的に解かねばなりません。
今度は箱に入れて、クローゼットに完全に閉じ込めて実験です。
次の日に、クーラーボックスに閉じ込めつつ、内部の反射音、反響音の吸音を目的としてタオルを何枚か入れました。もちろん空気の流入が前提ですから、蓋を半開きにした状態です。
ダクトは階下に行くことを想定しているので、今度はクローゼットの扉を完全に閉めます。
全く音を感じず、、、正確には少し音は聞こえるような気もしますが、前回と違って、注意深く耳を傾けても、深夜の暗騒音にかき消されています。
人間はある特定の音のレンジに集中すると、そこをうまく取り出して聞き分けられますよね。でもそれがうまく特定できないわけです。しばらくずーっと耳を傾けていましたが、いくら聞き続けても何も聞こえないので、眠くなってきてしまいました。。。
これはうまくいくのでは?と思いつつ寝ました。
、、、今後は一度も起きること無く、朝を迎えました。
実験成功! これはいけそうです。
本題である「地球沸騰化」を念頭に、
平均気温が+2℃上がった状態をシミュレートしたらどうなるのか?
やってみましょう!
※本稿では弊社のメインの活動範囲である、東京、埼玉、千葉、神奈川といった6地域を想定したものです。
ですが、地球沸騰化は世界的な傾向なので、どの地域でも同様のことが言えると思います。
気候が平均的に+2℃暖かくなるわけですから、これまでの結果から、真冬の検討が不要なことは自明ですね。当然、暖房負荷が小さくなります。
そして、さらに温暖化が進んだと仮定して、+4℃になるケースもシミュレーションしてみました。
先述の+2℃というのは世界の平均気温に対する上昇温度です。+4℃なんてありえない!と思われるかもしれませんが、温暖化が進むとある地域において一時的に最高気温が+4℃高くなる可能性はありえます。そして、それは数年後にやってくるかもしれません。
ちなみに、ちょっと古い資料ですが、環境省のパンフレット「STOP THE 温暖化2008」P8によれば、「21世紀末までに、(中略)…化石エネルギー源を重視しつつ高い経済成長を実現する社会(最も気温上昇の大きいA1FIシナリオ)では約4.0℃(2.4~6.4℃)と予測されています。」これは外れてほしい予測ですが。。。
出典:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/stop2008/
では、真夏を見てみましょう。
35℃64%から+2℃して、37℃60%で計算します。
UA0.26の場合、最大冷房負荷は4.9kW | UA0.46の場合、最大冷房負荷は5.9kW |
最大冷房負荷の結果をまとめると、
夏の昼 |
夏の昼 +2℃ |
夏の昼 +4℃ |
|
UA0.26 | 4.5kW | 4.9kW | 5.2kW |
UA0.46 | 5.3kW | 5.9kW | 6.4kW |
※ +4℃のときは39℃54%=25g/kg[DA]
これらの結果からわかることが2つあります。
1つ目は
+4℃上昇した状況におけるUA0.26の冷房負荷(5.2kW)と、
現在におけるUA0.46の冷房負荷(5.3kW)がほぼ同じであるということです。
(赤文字部分)
断熱性能の差で冷房負荷4℃分の差を補っていることになります。
よって、断熱材は冬のためだけにあるのではない、ということがわかります。
夏の暑さに対しても確実に効いているのです。
しかも、断熱材は電気代がかからず、機械のように壊れることもありません。
※ 逆にいうと、断熱性能が低いほど設備依存型になりやすい、ということです。
2つ目は
UA0.26の場合は、2℃上がるごとに負荷が0.3~0.4kWずつ上昇しているのに対して、
UA0.46の場合は、2℃上がるごとに負荷が0.5~0.6kWずつ上昇しています。
断熱材がしっかり効いていれば、気温の上昇に対して、負荷が緩やかに増えます。
「気温」だけでなく、「気温上昇」に対しても有効に働く、ということですね。
ちなみに、UA0.26のときには、+4℃の状況でも6畳用エアコン2台分の稼働巾に収まっています。
5.2kW < 冷房最大能力5.6kW
それに対して、UA0.46のときは+2℃で、すでに容量オーバーしています。
5.9kW > 冷房最大能力5.6kW
ですから、1ランク上のエアコンに変えなければなりません。
さらなる気温上昇が避けられない今日、
家づくりにおいて、安易に断熱性能を落としてはいけないことがわかります。
予算オーバーしたら断熱材は真っ先に削られがちです。
しかし、これまで見てきたように、断熱性能は妥協してはいけません。
これは「地球沸騰化」の時代において、快適性を維持する唯一の鍵なんです。
消費電力を最小化しながら、気候変動に左右されにくい住環境が実現可能になります。
断熱材は最強の冷暖房設備と言えるかもしれません。
高気密高断熱の家では、「夏を旨とした設計」を行えば、その断熱性の高さから、必然的に冬も快適に過ごせることになります。
今までは気温上昇した中で、夏のシミュレーションを見てきました。
では、真冬の晴れた昼間はどうなるのか?
これがオーバーヒートと言われるものです。
こたつ一個が600wですから、太陽の日射熱と内部発熱だけでこたつ10個分の熱を得られているということです。
オーバーヒートの是非については賛否あるのですが、基本的に弊社は肯定的です。
窓を開けて調節すればいいでしょう、というスタンスです。
屋外が凍えるような真冬に、家でTシャツ1枚で過ごせるなんて、とても贅沢な話だと思いませんか?ましてや、窓の開け締めなんて、今でも普通にやっているでしょう?
もっとも、窓を開けて熱を逃がすのではなく、家の蓄熱容量によってオーバーヒートを減らすという考え方もあります。そして、それはある程度機能するので、実際には「こたつ10個分」のような暑さにはなりません。
蓄熱というのは、昼間に家の基礎(コンクリート)や壁といった躯体に熱を貯めておき、日が落ちたら徐々に自然放熱するので、暖房を極力動かさないでも済むよね!という考え方です。
蓄熱容量の設定や蓄熱方法は今後の課題で、可能な限り取り組むべきものだと思っています。
蓄熱の方法や計算の目安は大体わかっているのですが、厳密にはまだ解けません。
「潜熱蓄熱材」のような新しい建材や、研究者の成果にも期待がかかっています。
地球の平均気温が上がれば、オーバーヒートの頻度は更に上がるわけですから、蓄熱の知見や技術が進めば、「一冬を完全無暖房で過ごす」という日も夢ではないと思います。
一見素晴らしいことにように思えますが、それは決して望ましい未来ではないということを肝に命じて、地球環境への取り組みを進めていきましょう!
夏における、本稿のシミュレーションでは温度なりに絶対湿度が上がるケースを想定し、2℃上がるごとに1g/kg[DA]ずつ上げて計算しています。しかし、気温が1度上がるごとに、大気が保持できる水蒸気は約7%増加する(※)と言われていますから、そういう意味では+1g/kg[DA]という設定はかなり緩い設定かもしれません。ただ、これは「保持できる」というだけで、10年間分の気象の推移を追いかけると、東京においてはこのぐらいの設定が妥当かな、というラインでシミュレーションしています。
※出典:https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar5/
気象庁HP IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書→ FAQ8.1
「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり。」
=「夏の暑さを主眼に置いて家づくりするのが良い。夏の暑い建物は耐えられない。」
兼好法師の徒然草の一節ですね。
※新版 徒然草 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)の表紙より
※鎌倉時代末期~室町時代初期(1330年~1349年頃)に書かれたとされる。(Wikipediaより)
今から30年ぐらい前までは、こうした考え方が日本の建築業界には根強く残っていました。
ここでは「夏の暑さは通風によって涼を得る」という概念が根底にあったと思います。
一般の方の認識もそうであったと思います。
ですから、断熱材への関心度は低く、スカスカの家が量産され続けてきました。
30年前の当時、「高気密高断熱の家」に取り組み始めた設計者や工務店は、周囲から白い目で見られていたそうです。。。
上記のような考え方が主流だったため、真綿でくるんだような分厚い断熱材の家は、
特殊すぎる!
過剰設計だ!
日本の家の在り方にふさわしくない!
、、、と、みなされていたわけです。
今ではそんなことはありませんが、そこを突き進んだ先輩達はすごいですね。
さて、30年前までの常識でいけば、夏を旨とした場合、通風によって涼を得るという発想になるわけですが、温暖化が進んだ現代において、通風は大量の熱風と湿気を呼び込むだけだと考えられています。そして夏はエアコンがあるし、むしろ冬をメインに考えて、パッシブ設計+高気密・高断熱化した方が良い!という結論に達します。それは多岐にわたる側面で、様々なメリットや恩恵があったからです。
・冬の暖房費削減 → もちろん冷房費も削減 |
・ヒートショックのリスクを減らす |
・家の隙間を0に近づけ、隙間風を無くす |
・室内気候を均質化し、温度ムラによる不快感を無くす |
・気密性が高まり、健全な計画換気・空調管理が可能に |
・結露を減らし、カビを抑制 → シックハウスやアレルギーの回避 |
こうして日本で高気密高断熱が取り組み始められてから30年以上経過したわけです。
、、、が、温暖化がさらにさらに進んで、掲題の「地球沸騰化」、、、
1890年以降の日本の平均気温データです。確実に気温上昇しています。
気象庁HPより
こうなってくると、議論は一周したことになりますが、再び「夏を旨とすべし」的な状況になってきます。もちろん30年前までのように、「通風」によって解決するのではありません。
どういうことか?
「地球沸騰化の時代」における家づくりについて順番に見ていきます。
※本稿では弊社のメインの活動範囲である、東京、埼玉、千葉、神奈川といった6地域を想定したものです。
ですが、地球沸騰化は世界的な傾向であるので、どの地域でも同様のことが言えると思います。
こちらは家の内部発熱、熱取得、換気装置の熱交換効率、隙間からの漏気、レンジフードやガス乾燥機などの排気量なども考慮した「家の温熱負荷計算」です。↓クリックして拡大設計する家ごとに、真冬、真夏、梅雨時の外気が、住環境にとって厳しくなる時期を切り取って計算します。例えば「真冬で内部発熱が最も少ない時」「真夏で内部発熱が最も多い時」というふうに、一番厳しい条件ごとに計算します。
上記の計算では、東京における過去10年間(2013年~2022年)の気象庁データの中で、冬の明け方で最も寒い時間帯を抽出してあります。明け方なので日射取得もありません。右側でこれらの顕熱・潜熱を処理するためのエアコン能力を算出し、目標とする室内の温湿度になるかチェックします。
UA値は0.26(6地域で断熱等級7)の性能の場合、室内を18℃60%にしたい場合のエアコンの暖房負荷は3.0kWとなりました。
(木造2階建て、延床120㎡で4人家族、1種熱交換換気で明け方で室内18℃60%、安全側でC値は0.5cm2/m2で計算)
それに対して、エアコンは日立の「白くまくん6畳用」(2022年度春夏モデル)を1、2階に1台ずつ。合計2台です。
最も寒い冬の朝(3.0kW必要)に対して、
エアコンの定格能力は2.5kW
稼働域は0.2kW~4.1kW
なんと、最も寒さが厳しい条件下でも、6畳用エアコン1台で家一軒の暖房を賄えてしまいます。
これを見ると、暖房は1台で十分なんだから、エアコンを2台設置するなんて、オーバースペックでは?と思われるかもしれません。逆に、家づくりを機に住宅性能について勉強された方であれば、むしろ「家の断熱性能がオーバースペックなのでは?」とのご意見もあるかもしれません。
ところがそういうわけにはいかないのです。
今度は夏を見てみます。↓クリックして拡大
東京において過去10年間で最も暑い日で、日射遮蔽を十分にしつつも、冷房負荷は4.6kW
※過去10年間(2013年~2022年)の東京の最高気温は2018年7月23日13時の37.4℃でした。
では、なぜ上記の計算では35.1℃で計算しているのか?
実は、、、
2018年7月23日13時の37.4℃のとき、相対湿度は38%、絶対湿度が15.3g/kg[DA]。
それに対して、1日前の22日13時では35.1℃で相対湿度64%、絶対湿度は23.0g/kg[DA]。
室内環境のコントロールを考える時、温度だけでなく除湿量の負荷も大きいのです。
よって除湿負荷が高い、35.1℃64%を採用しています。
このエアコンの冷房最大能力は2.8kWなので、1台では足りません。
だから2台稼働させるのです。
合計最大冷房能力2.8+2.8= 5.6kW > 冷房負荷4.6kW
ならば、よりハイスペックな能力のエアコン1台でも良いのでは?と思うかもしれません。
6畳用より3倍の広さに対応した18畳用ではどうでしょうか?
6畳用2台と18畳用1台では冷房最大能力がほとんど同じです。
6畳用2台 : 最大冷房能力2.8kW×2台 →5.6kW 18畳用1台 : 最大冷房能力5.8kW →5.8kW |
5.8kW > 冷房負荷4.5kW
これも能力的に足りていますね。
しかし、あえて2台で運用することで、様々なメリットが生まれるのです。
この点はかなり重要です。
a. 初夏は1台、盛夏には2台といったように負荷の変動に応じて、運用を変えられる。 |
b. エアコンが壊れた場合の備えとなる |
c. 暖房時は6畳用1台で賄えるので、冬は最小限の消費電力で運転可能 |
d. 梅雨時には1台を再熱の代わりに運転できる |
こうしたメリットがあるため、2台を前提とした運用がおすすめです。
消費電力はというと、
6畳用2台 = 冷房最大能力5.6kW → 最大消費電力850W×2台 = 1.7kW
18畳用1台 = 冷房最大能力5.8kW → 最大消費電力2245W ≒ 2.2kW
であり、同じ程度の冷房能力であっても、実は2台を運転させるほうが省エネなんですね。
※ おおよその市場初値は6畳用が13万円、18畳用が21万円でした。
その年の新品であれば、6畳用を2台買う方が高いのですが、1年前の型落ち品を買うのです。
エアコンの性能はある程度頭打ちになっており、1年前のモデルでもそこまで性能の差がありません。
型落ち品であれば安く買えるため、工事費を入れてもさほど変わりません。
在庫がほぼ無くなるゴールデンウィーク前までに型落ち品を購入するのがおすすめです!
※ 最適なエアコン能力の選定方法については本稿のテーマから外れるので、別稿にて。
UA値0.26からUA値0.46に断熱性能を落としたらどうなるのか?
やってみましょう。まずは冬から。
↑ 暖房負荷は5.1kW
UA値は0.46ですが、それ以外の条件は同じです。
最も寒い、日射の無い明け方です。(つまり自然の日射エネルギーが全くない状態)
暖房の最大能力が4.1kWなので能力不足となります。
しかし2台の運用が前提ですから、
4.1kW×2台= 8.2kW > 暖房負荷5.1kW
となり、依然として余裕があります。
夏はどうでしょうか?
2.8kW×2台= 5.6kW > 冷房負荷5.4kW
、、、ギリギリでクリアしました。
室内気候の観点からは、断熱等級6でも、6畳用エアコン2台で賄えそうですね。
、、、賄えますが、消費電力が大きく異なることに注意が必要です!
ここで、各ケースの最大負荷をまとめると、
夏の昼 (冷房負荷) |
冬の朝 (暖房負荷) |
|
UA0.26 | 4.6kW | 3.0kW |
UA0.46 | 5.4kW | 5.1kW |
と、なります。
性能的にはUA0.46の方が低い一方、建築コストは相応に安くなるので、どちらも一長一短。
この結果から確実に言えることは消費電力の違いだけです。
、、、では沸騰化したら?
戦後の貧しい時代を経験した年配の方ほど、節約的な意識があるのはわかります。ですから高断熱化に対して懐疑的だったり、全館空調に否定的だったりします。たしかに、必要に応じて冷暖房を使えば、比較的温暖な6地域では消費エネルギーが小さくなる傾向にあることは事実です。しかし、相応の「我慢」や「健康リスク」が伴っていることも、また事実なのです。
ましてやこれからは「地球沸騰化」の時代です。
このような時代であっても、赤ちゃんからお年寄りまで、健やかに過ごせる家が必要です。
また、本稿の中盤以降では、温熱負荷計算の実践をお示ししました。
このように負荷を丁寧に拾いながら、室内が目指すべき環境になるかどうかチェックしていきます。見た目のデザインや間取りと並行して、室内環境の設計も行います。
それでは次回、本題である「地球沸騰化」を念頭に、
最高温度が+2℃、+4℃と上がった状態をシミュレートしたらどうなるのか?
、、、やってみましょう!