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エアコン / クーラーのもう一つの使い方

エアコンが嫌い、という人はほとんどの場合風が当たるとつらい、体が冷えすぎるといった理由が多いです。

そういう方は、頑なに熱帯夜でもクーラーをつけません
あるいは、エアコンでしっかり冷やしてからOFFにして就寝、、、しかし、明け方に汗だくで目を覚ます、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

一方で、病院では空調が効いていますが、入院患者さんがクーラーによって冷えすぎたり、風邪をひくということは無いわけです。この差は何からくるのでしょうか?

実はクーラーによって体が冷えすぎてしまうのは、家の断熱性能が低いことが原因です。

ちなみに、人間の体感温度は「周囲の表面温度」と「空気の温度」の平均値です。(※1)
ですから、例えば25℃がちょうどいいと感じる人の場合、表面温度(放射温度)が30℃であれば、エアコンは20℃設定にしないといけません。

すると感覚的には平均値の25℃になりますが、冷風は20℃なので体が冷えすぎてしまう、というわけです。20℃を実現するために、しゃかりきに運転するので実際にはもっと低い温度が出ます。

、、、これが体調を崩す原因です。いわゆる冷房病ですね。
断熱性能が低い家では、往々にしてこういう状況が生まれます。(※2)

、、、かといって家をすぐに建て替えたり、断熱改修するわけにもいかない。。。
という方のために、発想を変えたクーラーの使い方をご紹介します。
クーラーが嫌いな方でも、冷房病になりにくく、暑い夏の夜を乗り切るための使い方です。

 


 

クーラーは「空気を冷やすもの」という認識が一般的ですが、
空気を温めさせない」といった使い方も可能です。

どういうことか?

いわゆる熱中症は、室温が気づかないうちに30度を大きく超えていた、といった状況で引き起こされますが、エアコンには温度センサーがあるのです。
これをうまく使います。

例えば29℃設定の場合、29℃を超えると自動的に29℃以下にしようと動きます。
、、、かといって30℃を超えることもない、というのがミソです。
これなら冷房病になったり、風邪をひくようなことはありませんね。

私の場合、夏季は室温28℃、弱風の設定で寝ています。
弱風ですから音も静かです。
室温が一旦28℃まで下がったら止まり、室温が28℃を超えると、思い出したように運転をはじめます。

この設定温度は個人によって、あるいは大人か子供かによっても異なるでしょう。
(直風はやはり気になりますから、吹出口からある程度離した位置に直風を遮る工夫をすれば、柔らかく室温を保てます。近すぎると冷気が回りませんのでご注意!)

ぜひ、寝るときの最適な温度を探ってみてください。
冷えすぎを嫌う方にも受け入れやすい方法かな、と思います。
起きているときに快適な温度より、少しだけ高めに設定するのがコツです。(※3)

 


 

、、、ということは冬は逆の使い方ができるということですね。
すなわち室内を「冷え過ぎさせない」という使い方です。

私の場合、16℃設定にしておいて、朝起きた時、室内が16℃以下にならないようにしています。(断熱性能の低い賃貸なので、、、)

 


 

近年、新築や断熱改修を検討されている方は、家の温熱性能のことや、エアコンに興味が湧いたという方もいらっしゃると思います。

しかし、どんなエアコンであれ、空調設備であれ、いちばん大事なのは断熱性能なのです。家の性能がしっかりしていれば、6畳用壁掛けエアコン1台でも家の隅々まで快適な温度にできます。

家の室内表面温度が安定しますから、エアコンも極端な温度設定にしなくて良いんです。

 


 

※1:厳密な体感温度は、室温と平均放射温度だけでなく、相対湿度、気流、着衣量、活動量など、さまざまな要素が組み合わさって決まります。この公式はあくまで簡易的な指標です。

※2:逆に冬の場合、表面温度(放射温度が10℃)だとして、20℃の体感温度にしたい場合は、30℃で暖房しなければなりません。これが喉を痛める原因になります。だから加湿器が必要になって、、、悪循環が進みます。いずれにしても断熱性能の不足によって、表面温度が高すぎたり、低すぎるためにエアコンに無理な運転をさせていることになります。

※3:就寝時は活動量が減って人体発熱量が下がるので、起きているときより高めの温度設定のほうがバランスがとれます。

1種換気と3種換気の比較考察

ダクトレス式第3種換気とは?

日本ではダクトレス式第3種換気が最も普及しています。安価に、しかも設計もメンテも簡易にできることから、広く普及しています。以下は、換気方式の概要です。

1種換気:機械給気+機械排気

2種換気:機械給気+自然排気(主に病院など)

3種換気:自然給気+機械排気

4種換気:自然吸気+自然排気(パッシブ換気=計画の難易度が高い ※)

3種換気は給気口から外気を取り込み、お風呂場などの換気扇から外に排出するだけです。最も一般的な換気方式です。
※弊社の提唱する超断熱の家は最終的にパッシブ換気を目指しています。

ダクト式第3種換気とは?

それに対してダクト式第3種換気というものもあります。気密性が一定以上確保されていれば、各部屋の汚れた空気を力強く確実に引っ張ることができ、いわゆる計画換気の確実性が高まります。

ではダクト式第3種換気とはいかなるものか?
日本住環境さんにお越しいただいて、いろいろお聞きしました。

商品はルフロ400


ルフロ400 各部屋の排気口からダクトを通って一箇所に集めて屋外に排気: 日本住環境 紹介冊子より引用

なんと言っても驚いたのはその静粛性。少なくとも中運転であれば、昼間は全く音が感じられないレベル。こればかりは実物を見て動かしてみないとわかないですよね。また、メンテの簡易性や設計思想も素晴らしいです。簡単に蓋を外して清掃できるように考慮されています。また、浴室の換気も可能とのこと。

とにかく、しっかり換気したいけど、安価で堅牢なシステムで、メンテはズボラになりがちなご家族にはおすすめです。
「賃貸住宅やアパート、マンション」など、必ずしもメンテに意識的なご家庭が住むとは限らない場合に組み込んでもいいと思います。

ダクトレス式もダクト式も、3種換気は給気口から外気を取り込み、お風呂場などの換気扇から外に排出するだけです。ですから熱交換がありません。(熱交換については後述)
したがって、外気と室内空気の温度差分、湿度差分のエネルギーロスがあります

※メンテを怠りがちなご家庭でも問題が出にくいように設計された商品ですが、もちろんメンテはこまめに行なったほうが良いです。少なくとも大掃除の年末には必ずメンテする、といった具合に。

※ピアラという3種換気の商品もあり、こちらは壁掛けできます。お風呂も換気経路に組み込めます。

※ルフロ400の場合は本体価格は15~16万円ぐらいとのこと。別途工事費がかかる。一種換気装置の場合、20万~90万、エアコンを組み込んだシステムだと150万円というものもあり、性能に応じてピンからキリまであります。

第1種換気装置とは?(ダクト式、ダクトレス式)

次にもう一つの普及型である、第1種換気装置について見てみましょう。

1種換気の全熱交換の概念図 : ケィ・マックインダストリーのaireカタログより抜粋、引用

1種の熱交換の仕組みは、外気と室内空気を熱交換素子内で交差させ、熱や湿気を交換し、熱ロスを最小化します。

例えば室内が20℃、屋外が0℃で熱交換効率が90%であれば、
室内から排出する20℃の空気の熱のうち、屋外の0℃の新鮮空気に18℃分の熱を渡して、屋外に2℃の空気を排出します。新鮮空気は18℃の温度になって室内に取り込まれます。
2℃分のロスしか無いわけです。

ちなみに、1種換気の中には顕熱交換全熱交換があります。

顕熱交換

交換されるのは温度だけで湿気は交換されません
3種換気と同様に冬は加湿器、夏は除湿機が必要になる可能性があります。

全熱交換

空気の熱だけでなく、湿気も交換されます。
洗濯物を室内干しするなど、生活上の工夫でもそれなりに加湿できるため、加湿器を使わずに済むケースも多いです。
逆に夏は外気の湿気を排出しながら熱交換できるので、除湿負荷が減ります。

総じて、1種はイニシャルコストが高いのですが、熱交換をするので換気に関する冷暖房費は落ちます。

ちなみに、ダクトレス1種換気というものもあります。

ダクトレス1種換気 : VENTOsan  エディフィス省エネテックHPより引用

ダクトレス1種の場合は、外壁に付加断熱による一定の厚みがあることを前提に、筒の中のセラミック素子によって熱交換するものです。70秒とか90秒ごとにファンが逆回転し、空気の動く向きが変わります。そして、セラミック素子が蓄熱と放熱を交互に繰り返しながら換気します。

面白い発想ですね。

エディフィスさんの資料によれば、最近ヨーロッパではダクトレス第1種換気は換気装置全体の出荷シェアの36.6%にまで伸びているそうです。

こうしてみると、コストはともかくとして、
高性能住宅なら「1種換気の全熱交換型」がベストな選択のようにも思えませんか?
、、、一概にそうとも言えません

1種換気システムで考慮すべきこと

次に、1種を採用する場合、配慮すべきことは何か?
順に見ていきましょう。

  備考
堅牢性 これは言うまでもありませんね。
メンテナンス性 メンテナンス性がわるいと、換気の空気質が落ちます。こまめにメンテしやすいような配慮がなされた製品を選ぶべきです。また、その換気装置を家のどの位置に設置するかも重要です。老後もメンテしやすいのかも考慮。
・故障時の維持交換のしやすさ 故障して本体丸ごとを取り替えるとき、天井をすべて解体して入れ替えるような計画だと、機械以外の出費も発生してしまいます。
臭気還元率 測定している会社と、知人の経験則に基づいた定性的な評価でしか知り得ない場合があります。メーカーはなかなか臭気還元率のデータを出さないことが多いです。
・機械の経路にトイレや脱衣所、お風呂を入れられるか 経路に組み込めない場合、お風呂場やトイレに個別の換気装置をつけねばならず、家全体で見たときの熱交換効率が落ちます。
・メーカーの熟知度や提案力 販売している商品の周辺のことまできちんと把握しているメーカーさんは心強いですね。
・メーカーが存続していく信頼性があるか? 仮にメーカーが無くなったり、生産停止した場合の対策が必要です。
・換気経路に空調(エアコン)を組み込めるかどうか? 組み込まない場合、換気装置とは別に設置したエアコンの冷暖気を各室に回すための配慮が必要です。
・組み込める空調タイプは「壁掛けエアコン」なのか「アメニティ」なのか? 堅牢性を重視した業務用エアコンを入れるのか、最新のニーズがふんだんに盛り込まれた家庭用エアコンを組み込むか要検討。家庭用エアコンのほうが燃費(APF)が良い場合が多いです。

補助換気装置室内循環ファンが必要か?あるいは、除湿機、加湿器が必要か?

メインの機械単体の消費電力だけではなく、補助的につける機械の消費電力や騒音も考慮。

、、、などなど、総合的に考えて選択していく必要があります。

住まい方によっても換気システムは変わる

また、各ご家庭の住まい方によっても選択すべきシステムが変わります。

例えば、

「在宅ワーカー、あるいは赤ちゃんやお年寄りがいる、在宅時間が長いご家庭

と、

在宅時間が短い、共働きのご家庭」

では事情が異なります。

在宅時間が長いご家庭の場合、「1種+24時間全館空調」は、一日の温度と湿度の変化が少なく、部屋ごとの温度差も少なくなり、穏やかな室内気候が形成されます。しかしながら1種といえども、換気もエアコンもずっと運転するわけですから、それなりにランニングコストはかかります。ただ、コスト換算しにくい恩恵が得られるということも事実です。1種・全熱交換であれば、湿度の点でも満足度が高くなるはずです。

一方で、

在宅時間が短いご家庭の場合、エアコンを間欠運転するケースが多くなってしまうと思います。蓄熱性が高い設計だと、朝起きてエアコンを付けたけど、家を出る頃にようやく部屋が温まってきた、、、なんてことになってしまいます。

家の蓄熱性によって、エアコンが効き始めるタイミングが遅延します。
特に、「床下エアコン」は、床下の基礎コンクリートに熱を奪われるため、間欠運転には向いていません。

こういうご家庭の場合、家に居ない間もずっと換気装置は電力を消費し続けます。
1種の熱交換効率の数字や、エアコンの消費電力の差だけを見ていると、換気装置本体の消費電力を見落としがちです。

たとえば、機種にもよりますが、
1種換気装置は130m3/hのとき、20W~50W程度消費します。
3種換気装置は130m3/hのとき5W程度です。

、、、ということは、
春や秋など、エアコンを全く使わない時期でも、3種に比べて、数倍~10倍以上の電力を消費し続けることになります。
1種は内外の温度差があるときに、熱交換装置としての性能が最も発揮されるという点に注意が必要です。

このような観点から、ライフスタイルに応じて選定することも大事です。

間欠運転:一時的に必要に応じてエアコンをつけたり消したりする運転のさせ方。

連続運転:夏季や冬などの冷暖房需要時に24時間つけっぱなしで運転させる。日本人の感覚からすると「もったいない精神」が働いてしまうが、高気密高断熱が一定レベル以上(G2.5相当以上)になると間欠運転より連続運転の方がランニングコストが安くなる。

各室個別エアコン:全館空調が1個,または2個のエアコンで冷暖房を賄うのに対して、各部屋に個別にエアコンを設け、必要に応じて各部屋ごとにエアコンを稼働させるやり方。

全館空調:定義はいろいろあるが、ここでは方式はなんであれ、より少ない熱源数で家全体の温湿度をコントロールする空調システム全般を示す。

換気や空調の話は、なぜ複雑になるのか?

ネット上でも種々の主張や議論がなされていて、ややこしいです。

第1種ダクト換気
第1種ダクトレス換気
第3種ダクト換気
第3種ダクトレス換気

×

全熱交換

顕熱交換

×

各室
個別エアコン

全館空調

×

24時間連続運転

間欠運転

×

地域区分

断熱性能

気密性

この他にも換気方式の中には、
「換気・空調経路内に浴室やトイレを組み込むか?」
「補助の室内間ファンがいるか?」
「給気経路に熱源を置くか、分離するか?」、、、などなど

というわけで、その組み合わせ数は膨大となり、百家争鳴のごとく、ネット上で無数の主張が入り乱れているのです。

では、何が本当に、我が家にとってベストなのか、、、?

以上のように、1種と3種のそれぞれの特徴を見た上で、どちらも一長一短あることがおわかりいただけたと思います。総合的に考える必要があるのです。

また、プロの意見も様々な考え方や解き方があります。
これから家を建てようという方は、「理想のライフスタイル」と「家の性能」を元に、空調や換気計画について、建築士によくご相談されることをおすすめします。

 


「1種換気装置」を選定される方は、こちらも併せてご一読ください。

1種換気装置が流行っていますが、実際に弊社が遭遇したケースについて書こうと思います。示唆的な内容でしたので、1種の採用を検討されている方は、ぜひお読みください。

空調・換気における、メンテナンスのバリアフリー性について

文京区の千石にて、新築のお打ち合わせ。
お客様は大変高齢の方です。

この計画をきっかけに、高性能住宅には欠かせないファクターの一つである空調・換気のメンテナンス性について思案しています。

数ヶ月に一度、脚立に上って天井点検口を開け、エアコンや換気装置のフィルター清掃をするような計画は提案しづらい。。。いずれはメンテの頻度が落ちてしまう可能性が高いです。

バリアフリー住宅とはよく言われるキーワードですが、新鮮な空気と、温湿度が調整された空気が循環していることはとても大切なことですから、そのメンテナンスに障壁があってはまずいのです。ここでメンテナンスのバリアフリー性について考えてみます。

 

以下、考察。

例えば先程も申し上げたように、天井点検口だと脚立や椅子を運んでくるのもひと手間かかります。高齢になってきたら、脚立に登るのもおぼつかないかもしれません。デザイン上の工夫が必要ですが、天井高を1.9m程度の高さに設定することができれば、メンテナンスし易いと思います。


70歳になったつもりで、脚立に登って点検している自分を想像してほしい。
同時に、年金生活になって貯蓄を崩してまで専門業者に定期メンテの依頼をするだろうか?

一方、床の点検口だと、そこに物を置けません。
クローゼットの中の床下に点検口を設けたら、十中八九、いろいろな物が置かれることになります。床だから、それなりの重さとボリュームのある荷物を置いてしまうでしょう。
そして置いたら、移動させた上に、元に戻さなくてはなりません。
メンテのたびにできますか?


もちろん廊下にこれはありえない。せめてマットなどを敷く脱衣所の床やキッチンならありでしょう。
しかしながらパッシハウスクラスの高性能住宅のキッチンであれば、足の冷たさを解消するためのマットがそもそも不要。

あるいは、空調・換気のための専用の部屋、すなわち空調室を設ければ、地価の高い都心部ではもったいない空間の使い方になってしまいます。(費用対効果のバランスが悪くなる)また、そういう部屋は物置と兼用になるでしょうから、物がたくさん収納されたら、これもまたメンテ上のバリアになる可能性が出てきます。

あるいは、小屋裏エアコンという選択肢はどうでしょう? 実は行政によって法的な取り扱いの差があります。小屋裏への固定階段の設置を認める区と認めない区があります。固定階段があれば、比較的小屋裏に行きやすくなります。ところが、そもそも小屋裏へのエアコン設置を認めない区が多いのも事実なのです。
(小屋裏エアコンとは、小屋裏にエアコンを設置し、各部屋にファンで送風するという仕組みだが、行政区によってはそれを認めず、通達の運用により小屋裏という非居室空間に、快適性や居住性をもたらす要素をなくすべし、という前提がある。地方ではその辺がゆるく、実現しやすい傾向にある。システムのメーカーは小屋裏にエアコンを「置いている」という取り扱いで申請して対応しているケースもあると聞く。このへんは国の省エネ化の促進によって、その必要性から運用が変わっていく可能性もある。)

あるいは、床下エアコンという選択肢はどうでしょう?
これは床下空間をきちんと確保できれば、比較的メンテナンスがしやすく、法的縛りも少ないシステムです。何より床面温度が室温より高くなるという点を見逃せません。
ただし、冬季限定利用で、夏季に利用する場合は補助的な利用か、ファンをうまく組み合わせないと結露などのリスクがあります。
また、メンテナンスのために床下に適度な空間を設けるということは、基礎の作りが半地下となり、残土処分費の増大や基礎工事費などのイニシャルコストが上がるわけで、コストバランスが求められます。ここをクリアできれば、結構良い仕組みと言えます。
逆にコストを気にして狭い床下空間にしてしまうと、上述の通り、維持しづらいシステムとなってしまうでしょう。
※ちなみにパッシブハウスクラスになると室内気温と表面温度がほぼ均一になるので、床下エアコンにこだわらずとも温熱環境を維持できる。
※床下を地面下に掘り下げるのではなく、床上を持ち上げて空間を確保する方法もある。

こうして考えていくと、どの方法を選択しても一長一短あり、何かしらのメンテ上のバリアが発生します。それはすなわち快適性の維持がいずれ難しくなっていくことを意味しています。

高性能住宅に対して意欲のある若い世代の家族なら維持可能かもしれませんが、年齢が進めばどうなるかわかりません。将来的な加齢や、とかく怠けがちな人間の性からは逃れられないでしょう。そういうことまで配慮して設計しなければ、一体何がデザインされたのか?ということになってしまいます。

よって、どのシステムを採用するにしても、バリアとなるものを見極めて、それを解消する工夫が必要になります。

杉並区荻窪の家:縁側土間コン打設

だんだん暑くなってきました。

中庭に面する縁側空間の土間上にモルタルが塗られました。
縁側の基礎が建物本体からすこし隙間が空いていますね?
建物の基礎の外側には断熱材が同時打ち込みされており、縁側の基礎からの熱橋を絶縁するために離しているのです。

メッシュ配筋のかわりにバルチップという補強繊維をモルタルに混ぜて土間打ちします。
※セメントコンクリート用ポリオレフィン系補強繊維

針金の集まりにように見えますが、一本一本は柔らかいです。

決められた量を混ぜていきます。

職人さんも初めて使う素材のようで、えらく苦労されたようです。

鉄筋の金額が上がっていますから、土木でよく使われるような製品も積極的に活用していきたいところです。

もし打設が終わってポリオレフィン系補強繊維が多少飛び出しているようなことがあっても、バーナーで炙ればなくなってしまいます。また、将来的に廃棄する段階でも一定の%以下の含有量なため、再生砕石として利用できます。

気密測定講習

良好な住環境を作るためには、気密性確保がとても大事です。

お客様と話していて、
「昔の家のように適度に空気が動いている方がいい」
「気密を高めたら密閉されて息苦しくなるんじゃないか」
、、、みたいなことを言われることがあります。

でも、そうではないのだと一生懸命ご説明します。
気密性は高ければ高いほどいいのです。
意図しない隙間があって良いことは一つもありません。(この話はまた後日。)


荻窪の家の気密測定

東京都荻窪の物件で気密測定をしたのですが、さらに具体的な測定方法や気密性能の算出プロセスについて学んでみようと思ったわけです。


毎日の業務終了後にお勉強、、、した甲斐もあって、
7月14日に試験を受けて、8月29日に合格通知が来ました。

事業所登録、気密測定技能者登録すれば、気密測定が行える(性能証明書の発行)とのことでしたが、登録はせず。

自社物件の自社測定は、建築士の資格の名の元に行いますから、登録しなくても測定はできます。いずれは専門業者さんに外注せずに、自社測定にチャレンジしてみたいと思います。

PLATEAU(プラトー)

久しぶりにSketchUpユーザーグループのミーティングに参加しました。
本日のお題は「PLATEAU(プラトー)」
都市や街を立体化するのはなかなかハードルが高いです。
SketchUpとRhinocerosの両方で作成を試みましたが、とてつもなくデータが重い。。。

↑クリックして拡大

かなり試行錯誤しましたが、満足感ある出来栄えです。

テクスチャーは解像度が荒く、まだそこまでは期待できないみたいです。

PLATEAU(プラトー)というのは国土交通省が主導しているプロジェクトです。
日本全国の都市を3Dモデル化(データ化)しようとしています。

国土交通省が主導する、日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU」。データを活用するためのガイドやさまざまなシーンでの活用事例、最新ニュースやアプリケーションなど、PLATEAUに関する情報をお届けします。

我々建築の設計に携わる者としては、都市を3Dデータとして設計に活用するといったシンプルな使い方になると思いますが、応用できる範囲は広大です。

例えば津波の災害シミュレーションを元に避難計画を立てたり、都市計画やまちづくりに活かすといった活用が目論まれているようです。

ドローンによる配達が一般化した場合、経路の最適化に使われるかもしれない。あるいはドローンが飛び回れば、情報収集も同時におこなって、都市をリアルタイムで更新していくような仕組みも見えてきそうです。

グーグルアースが都市をグラフィックスとして立体化しているのに対して、PLATEAUでは建物や道路など、一つ一つが情報を持っている作り方になっています。都市をデータ化しているとも言えるでしょう。

LOD(Level of Details)という概念は、コンピュータグラフィックスが出てきた1976年頃からあるようです。

  • LOD1:建物の2D形状に高さ情報をかけあわせたシンプルな箱モデル
  • LOD2:LOD1に屋根形状を追加したもの
  • LOD3:さらに窓やドアの外構(開口部)を追加したもの
  • LOD4:建物内部までBIM/CIM等でモデル化したもの


PLATEAU特設サイトより引用

どこまで詳細度を高めるのか?という点については議論の余地があるでしょう。
LOD4レベルともなると、そもそも誰がデータ化するのか?
現場での頻繁な変更に対して、どこまで正確に反映させるのか?
部分的に改修工事をした場合は?、、、などなど。

正確性がなければLOD4の付加価値は薄れるわけで、LODのレベルが進むに従って、作成コストや維持コストは莫大になると推測できます。

とはいえ、様々な利用法を開発できる基盤として、データ化の意義は大きいと思います。

一般社団法人「あんしん解体業者認定協会」さんからインタビューを受けました

2020年の2月、一般社団法人「あんしん解体業者認定協会」さんから、弊社のインタビューをしたいとのお申し出を頂きました。

電話で担当者の山城さんとお話するうちに、お人柄に感じ入るところがあったのでインタビューをお受けすることにしました。

実際にお会いして会話を進める中で、まっすぐな社風や雰囲気、そして代表の鈴木佑一さんのフレッシュで透徹したビジョンも感じとることができ、この方達はとっても伸びていくんじゃないかなと思いました。

私は「あんしん解体業者認定協会」さんをとても応援したい気持ちになりました。

設計において考えていることは、この記事の内容ばかりではないのですが、普段から良く意識していることをうまく引き出していただいたインタビュー記事です。

記事の冒頭は、まるで匠(?)の紹介文みたいで恥ずかしいですが (笑
ご笑覧ください。

 

↓インタビュー記事はこちらです。

株式会社VITの黒澤社長によると、設計で人の密度を変えるだけでもコミュニケーションの機会を増やすことが可能だと言います。設計の力で空間や雰囲気も操作してしまう。一体どんな技術なのでしょうか。

 

↓一般社団法人「あんしん解体業者認定協会」さんのリンク先はこちらです。

すべてのお客様に「あんしん」な解体工事を 私たちは解体業界の透明化のために活動しています 2023年3月15日 川崎市と「解体一括見積サービスWEBサイトを活用した空家の除却促進に向けた実証実験に関する協定」を締結しまし…

 

「フジカケ」×「ケケノコ」コラボ!
ケケノコ闊歩in日暮里

去る2019年5月11日に、藤掛さんのグランドオープン前の告知イベントとして

ケケノコ闊歩in日暮里

というイベントが開かれました。
このイベント前後にはケケノコさん達を起用した告知写真などがネットに掲載されました。
ちなみに日暮里繊維街でこのような取り組みは初めてだそうです。

ケケノコというのは「新しいタイプの竹の子族」を目指す「ケケノコ族」のことです。
全国のイベントに出向いて企画を盛り上げたり、告知を拡散するのに活躍しているパフォーマンス集団です。派手で奇抜なコスプレとともに、音楽とダンスを組み合わせて街中を練り歩くのです。

こういうのを見られる機会もあまりないので、興味津々。

ケケノコさんたちは街中の練り歩いて、各ポイントでポーズを取ります。
周りにいる人たちは一斉にスマホで写真を撮ります。
すると、いろんなお店をバックにした写真が拡散する、という相乗効果が期待できます。

決めポーズ(写真タイム?)が終わると次のポイントへ向かい、音楽とともに踊りながら移動します。

藤掛さんの姉妹店、「フリカケ」のお店の前で決めポーズ。
皆さんそれぞれ決めポーズがあるようです。
過剰美」をさらに突き抜けたような独特の強烈さがありますね。
服をよく見ると鱗のような布とか特殊でしょう?
藤掛さんはこういう布も扱ってらっしゃいます。

そしてまた移動。
すれ違う外国の旅行客の方も、思わずスマホを取り出しています。

ちなみに日暮里はスカイライナーに乗って、成田から40分ぐらいで来られる場所です。そうした利便性もあって、訪日外国人が最初に立ち寄る場所になりつつあるそうです。
日本にしか無いような布を求めて世界中の方が来られるのです。
高齢化も進みつつある繊維街の商店は、外国語対応に四苦八苦しているとか。

わっせわっせ

皆さん息ぴったりです。

面白いことに、どの人もあえてそうしているのか、表情を作らずクールにパフォーマンスをしているのが印象的です。

そしていよいよ、藤掛さんの駅前店舗の入り口に来て、「決め!」

藤掛新店舗の中でも踊り始め、お客さんも何事かと騒然とします。
そうこうしている間に、皆さんSNSに上げたり、友達に写真を送ったりして拡散しているわけです。このへんが現代的で、ド派手な衣装とパフォーマンスは、SNS時代の告知拡散の仕組みと連動しているかのようです。

一通り、パフォーマンスが終わったらお店のど真ん中で最後の「決め!」
お疲れさまでした。

私が見ていて思ったのは、こういうパフォーマー達に協力を依頼して、
もっと「街のイベントと連動したキャラ」として起用したら良いんじゃないかと思いました。
地方の商店街など、潜在的なニーズがたくさんある気がします。

もちろん「練り歩きパフォーマンス」は一定時間で終わってしまいますが、
ネットでのイベント告知やポスターなどの印刷物と組み合わせたら、より印象的なアピールができそうです。

 

藤掛さんの関連記事

こちらもあわせてどうぞ

創業90年以上を誇る特殊生地の老舗、藤掛さんの本店・倉庫・本社ビル改修の意匠設計監理に携わりました。
藤掛さんの日暮里繊維街への移転を機に、銭湯を改修して「倉庫と事務所」併設の事業所をつくりました。

 

日立さんの「秋の庭園公開」

東京都国分寺市に日立製作所さんの中央研究所がありまして、年に2回、庭園開放が開催されます。広大な自然豊かな敷地内を一般開放をする日なのです。野川の水源にあたる場所で、環境的にも素晴らしいところです。ちょうど弊社のお客様の「きの実」さんからのお誘いもあり、家族で行ってきました。中央の広場の芝生スペースに様々なお店が出店しています。

ついつい色々買ってしまいます。

「きの実」さんも頑張ってらっしゃいます。お年寄りから子供まで幅広く興味を持っていただいているようです。お客様の空いた際にちょくちょく顔を出して、今後の展開とかアイディアを打合せ。

食べるのに夢中で、肝心の庭園散策もしなくては(笑
もうすっかり秋も深まっていることを実感。
子供は落ち葉の下のどんぐりと虫に夢中です。
ちなみにこの池には白鳥や鴨がいます。

帰り道の公園で

 

 


「きの実」さんの記事はこちらを御覧ください。

梅干しを中心とした健康食品を扱う「きの実」様の新会社への移行を機に、コンセプト構築、ロゴデザインをご提案しました。

錫 (すず) の器づくり ~経験や体験について~

以前から気になっていた錫を使ったワークショップに参加してみました。
東京都目黒区にあるMakers’ Baseという工房で開催している「錫酒器」作りです。4時間かけて下記画像のように左から順番に、丸く平たい錫の原板をたたいて、絞っていって小さなおちょこのような器を作ります。錫器 (1)

錫には水の浄化作用があるとかで、どんな金属だろうという興味があったのです。素材の性質を熟知したいと考えていたこともあり、参加してみることにしました。

結構体力を使います。・・・というより腕が痛い、、、。
何百回と錫を木槌や金槌を使い分けて打ち込みます。砂の入ったバッグを下地に、木槌でたたき続けると、だんだん湾曲してきます。錫は意外に柔らかいです。ここで入荷している錫は純度の高いものらしいです。
錫器 (3)

ひっくり返すと布地の模様が錫に転写されています。そのぐらい軟度が高いわけです。
(注:画像が少々ぶれているのは、何百回も打ち込んだせいで手がぷるぷるしているからです)
錫器 (4)

器がそれらしい形になった後、講師の方が内側から成形していく過程を実演してくれました。
錫器 (6)

丸みのある先端を持った鉄の治具を下地に、さらに外側からたたいて、外周部をすぼめつつ、
全体を気に入った形まで整形していきます。
錫器 (5)

鏡面をもった特殊な金槌をつかって、光沢のある表面へと変化させます。叩いてなめらかにするので、表面に独特の文様がつきます。打面を打った瞬間に横にずらすように(表面にすりつけるように)移動させると亀の子状の文様になります。
錫器 (7)
なんとかそれらしい形にまで整えました。丸い原板を無理矢理すぼめて器の形に整えますから、当然エッジは広がって、ぎざぎざになっていきます。つくる人によって力の入れ方、全体のバランス感覚などが形状に表れてくると思います。
錫器 (8)

ここから「やすり」や「しごきベラ」をつかって先端を整えていきます。参加者全員くたくた。女性には少々キツイかもしれません。
錫器 (9)
やすりで大まかにエッジを整えます。先端がだんだんコンロの炎の揺らぎのように見えてきたので、そのニュアンスをさらに強調することに決定しました。
錫器 (10)

3時間半ぐらいで大まかに完成しました。最後は打刻して自分の名前など好きな文字を刻印できます。ところが刻印がものすごく小さいため、どの刻印がどの文字なのか判別することも難しい、というぐらい小さいです。ようやく文字を探し出して、底に打刻して完成。
錫器 (11)

それらしく「火焔酒器」と名付けました。
錫器 (12)

いつからか、こういった経験や体験を重んじるようになって、工場見学やら体験セミナーに頻繁に行くようになりました。

コンピュータがいずれは人工知能をほぼ完全に手中に収め、知識をさも体験したかのように絶妙の言葉の組み合わせで我々に語りかける日が来ると思います。人間が本やネットで得た知識には限界があり、コンピュータにかなうはずがないと、プログラミングをかじってから、さらにそう思うようになりました。ひとたびプログラムが正確にできあがれば、疲れ知らずで、寸分の狂いもなく、プログラマーが考えたことを再現できるので底知れぬ力を感じます。

しかしコンピュータはプログラムした人の「認識」という枠組みを超えることはできませんし、莫大な情報から言葉を紡ぎ出せても、「組み合わせ」という枠組みを超えられない。

だとすると体が経験したこと、リアルな現場で感じたことは、コンピュータにはできない創造の源となるはずです。なぜならコンピュータには体が無いので「体験」「経験」ができないからです。

いつの時代も価値を最終的に決めるのは人間だし、新しい価値の枠組みを創造するのも人間。
そういった直感が走った時から、このような「体験」とか「見学」を大事にするようになりました。

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