ダクト式第3種換気~1種換気と3種換気の比較考察~

ダクト式第3種換気とは?

日本ではダクトレス式第3種換気が最も普及しています。安価に、しかも設計もメンテも簡易にできることから広く普及しています。それに対してダクト式第3種換気というものもあります。気密性が一定以上確保されていれば、各部屋の汚れた空気を力強く確実に引っ張ることができ、いわゆる計画換気の確実性が高まります。

ではダクト式第3種換気とはいかなるものか?

日本住環境さんにお越しいただいて、いろいろお聞きしました。重いのに機械を組み込んだアタッシュケースを持って弊社にお越し頂きました。ありがとうございました。

※換気方式の概要 1種と3種の方式が一般的に採用されている。

1種換気:機械給気+機械排気

2種換気:機械給気+自然排気(主に病院など)

3種換気:自然給気+機械排気

4種換気:自然吸気+自然排気(計画の難易度が高い)

商品はルフロ400


ルフロ400 各部屋の排気口からダクトを通って一箇所に集めて屋外に排気: 日本住環境 紹介冊子より引用

なんと言っても驚いたのはその静粛性。少なくとも中運転であれば、昼間は全く音が感じられないレベル。こればかりは実物を見て動かしてみないとわかないですよね。また、メンテの簡易性や設計思想も素晴らしいです。簡単に蓋を外して清掃できるように考慮されています。また、浴室の換気も可能とのこと。

数年前にも別商品の件で日本住環境の方とお打ち合わせさせていただきましたが、社員の方達の商品熟知度がすばらしい。(メーカーの社員さんなんだから、当たり前といえば当たり前なんですが、最近はそうではないメーカーさんも多くて、、、大変だと思うけど頑張って!)

ダクト式第3種を使う必要性が出てきた場合は、この機械を組み込んでみたいと思いました。とにかく、しっかり換気したいけど、安価で堅牢なシステムで、メンテはズボラになりがちなご家族にはおすすめです!
「賃貸住宅やアパート、マンション」など、必ずしもメンテに意識的なご家庭が住むとは限らない場合に組み込んでもいいと思います。
※メンテを怠りがちなご家庭でも問題が出にくいように設計された商品ですが、もちろんメンテはこまめに行なったほうが良いです。少なくとも大掃除の年末には必ずメンテする、といった具合に。

1種換気と3種換気の違いと特性

3種換気は1種換気よりイニシャルコストが安いですが、熱交換をしない換気方式なので冷暖房費は当然コストアップします。ただしこれは24時間全館空調+3種換気する場合です。

在宅時間が比較的短いご家庭の場合、個別エアコン間欠運転+3種換気だとコストメリットを受けられる可能性は高いです。(もちろん高気密高断熱が前提です)

※ちなみにルフロ400の場合は15~16万円ぐらいとのこと。別途工事費がかかる。

間欠運転:一時的に必要に応じてエアコンをつけたり消したりする運転のさせ方。

連続運転:夏季や冬などの冷暖房需要時に24時間つけっぱなしで運転させる。日本人の感覚からすると「もったいない精神」が働いてしまうが、高気密高断熱が一定レベル以上(G2.5相当以上)になると間欠運転より連続運転の方がランニングコストが安くなる。

各室個別エアコン:全館空調が1個,または2個のエアコンで冷暖房を賄うのに対して、各部屋に個別にエアコンを設け、必要に応じて各部屋ごとにエアコンを稼働させるやり方。

全館空調:定義はいろいろあるが、ここでは方式はなんであれ、エアコン1台など、少ない熱源数で家全体の温湿度をコントロールする空調システム全般を示す。

一方、24時間全館空調+1種換気は、ずっと運転しているのでイニシャルコストもランニングコストも高くなりますが、冬において給気温度や湿度維持の面でも快適性が向上するので3種換気との単純な比較はできません。3種換気で「1種換気と同等の快適性」を求めようとすれば、冬は補助暖房や加湿器、夏は除湿機(あるいはエアコンのドライ機能をフル稼働)を併用する可能性が高くなります。コスト比較するのであれば、そういう装置のコストや維持費も加味する必要があります。


1種換気の全熱交換の概念図 : ケィ・マックインダストリーのaireカタログより抜粋

正確には1種換気の中にも顕熱交換全熱交換があり、顕熱交換の場合は、交換されるのは温度だけで湿気は交換されませんから、3種換気と同様に加湿器、除湿機が必要になる可能性があります。全熱交換の場合は多少なりとも湿気が還元されますから、補助的な使用で済むケースが多いです。洗濯物を室内干しするなど、生活上の工夫でそれなりの湿度を維持できるケースが多いです。

全熱交換:熱も湿気も交換する方式

 顕熱交換:熱だけを交換する方式。湿気は交換しないので、冬は過乾燥になりがち。

1種換気も様々な商品が存在しますが、ダクト式1種換気の場合は20万円~80万円ぐらいと性能や特性によってばらつきが大きいです。空調(エアコン)を組み込んだシステムだと150万円というのもざらにあります。

ダクトレス1種換気という商品もある。

ダクトレス1種換気 : VENTOsan  エディフィス省エネテックHPより引用

1種換気システムで考慮すべきこと

高いほど高品質、快適性が高いと考えがちですが、必ずしもそうとは言い切れません。
考慮すべきことをリスト化するならば、、、

  備考
堅牢性  
メンテナンス性  
・故障時の維持交換のしやすさ 故障して取り替えるときに、天井をすべて解体して入れ替えるような計画だと、機械以外の出費も発生してしまう。
臭気還元率 測定している会社と、メーカーや知人の経験則に基づいた定性的な評価でしか知り得ない場合がある。
・機械の経路にトイレや脱衣所、お風呂を入れられるか 経路に組み込めないシステムの場合、1種換気装置とは別に、個別の換気装置をつけねばならず、家全体で見たときの熱交換効率の意味合いが変わってくる。
・メーカーの熟知度や提案力 販売している商品の周辺のことまできちんと把握しているメーカーさんは心強い。
・メーカーが存続していく信頼性があるか? 仮にメーカーが無くなったり生産を停止した場合の対策を考慮しておくことも重要。
・換気経路に空調(エアコン)を組み込めるかどうか? 組み込まない場合、各室に十分な冷暖気を回すための配慮が必要。
・組み込める空調タイプは「壁掛けエアコン」なのか「アメニティ」なのか? 堅牢性を重視した業務用エアコンを入れるのか、最新のニーズがふんだんに盛り込まれた家庭用エアコンを組み込むのかも要検討。家庭用エアコンのほうが燃費(APF)が良い場合が多い。

補助換気装置室内循環ファンが必要か?

あるいは、除湿機、加湿器が必要か?

メインの機械単体の消費電力だけではなく、補助的につける機械の消費電力や騒音も考慮する。

、、、などなど、総合的に考えて選択していく必要があります。何よりもプランを考えていく段階で、「家全体のデザイン」と「採用したシステム」が一体となった空間を作り、快適性を最大化できるように配慮する必要があります。

住まい方によってもシステムは変わる

また、各ご家庭の住まい方によっても選択すべきシステムが変わります。

例えば、

在宅時間が短い共働きのご家庭」

と、

「在宅ワーカーや赤ちゃんやお年寄りがいる在宅時間が長いご家庭

では事情が異なります。

在宅時間が長いご家庭の場合、1種換気+24時間全館空調は、得難い快適性を享受できる可能性が高くなります。すなわちコスト換算しにくい恩恵が得られるということです。1種換気が全熱交換であれば、湿度の点でも満足レベルが高くなるはずです。一日の温湿度の変化が少なく、部屋ごとの温度差が少なくなり、穏やかな室内気候が形成されます。

もちろん高気密高断熱が十分なレベルに達していれば、3種換気方式+各室個別エアコン間欠運転でも快適性は得られます。ただし、空調が効き始めるまでに時間がかかってなかなか起きられなかったり、脱衣所が寒かったり、、、など家の中の温度差を感じることが多くなります。そういう意味でも1種換気+24時間全館空調というは快適性が高いわけです。

在宅時間が短いご家庭で、エアコンを間欠運転する場合は「家の蓄熱性」も考える必要があります。(全館空調を採用する場合は間欠運転する人はいないと思いますが、、、)
家の蓄熱性を高く設定しすぎると、家を出る頃にようやく部屋が温まってくる、、、なんてことになってしまいます。エアコンの熱が効き始めるタイミングが家の蓄熱性によって遅延します。特に床下エアコンを採用して床下を空調範囲に含める計画の場合です。

高気密高断熱はもはや前提条件という視点に立った上で、ライフスタイルに応じた設計が求められます。

なぜ、話が複雑になるのか?

さて、大変混み入ってややこしいですね。ネット上でも種々の主張や議論がなされています。なぜこんなに話が複雑になるかというと、下の表のように、設備とその種別、運転方法の組み合わせによって初めて空調・換気のシステムが成り立つからです。

4項目の各要素分の組み合わせ(4×2×2×2=32通り)だけでなく、換気方式の中には、「換気・空調経路内に浴室やトイレを組み込めるものと、組み込めないもの」、空調方式の中には「補助の室内間ファンがいるものと、いらないもの」など、、、、複数のファクターがかけ合わさります。

あるいはZehnder Comfohomeのように「エアコンと換気が一体となったシステム」なのか、「各設備をバラバラに組み合わせるシステム」なのかでも話が変わってきます。

また、家の断熱性能や気密性能が異なる場合、各方式の意味合いやシステムが成り立つ前提が変わってきます。もちろん日射取得、日射遮蔽など、窓の性能やサイズ、配置にも左右されます。

、、、というわけで組み合わせ数は膨大となり、百家争鳴のごとくネット上で無数の主張が入り乱れているのです。(しかも日本各地で気象条件も異なる。。。)

① 換気

種類

 

② 換気

熱交換方式

 

③ 空調

種類

 

④ 空調

運転方式

第1種ダクト換気

第1種ダクトレス換気

第3種ダクト換気

第3種ダクトレス換気

×

全熱交換

顕熱交換

×

各室個別エアコン

全館空調

×

24時間連続運転

間欠運転

ランニングコストと太陽光パネル(PV)


panasonicのHPより

コストアップの話がありましたが、冷暖房需要時のランニングコストは「太陽光パネル(PV)」の発電によってほぼ相殺されます。今なら都内であれば補助金も潤沢に出る(※1)ので、ランニングコストをまかないつつ、長期的にはイニシャルコストを回収できる可能性が非常に高いという試算がなされており、設置を検討すべきと言えます。PV(※2)は次世代の住環境を考える上で外せない設備であり、別稿で改めて書きます。

※1 2022年6月時点
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/home/dannetsu-solar.html

※2 PVPhotoVoltaic(フォトボルタイク)=太陽光パネル
   海外ではSolar PanelとかSolar Cellとは呼ばずPVという呼称が主流。