アルセコ 1(外壁の材料選び・材料特性)

外壁材・断熱材の選定

高気密高断熱を学び、実践していくと、結局のところ、どんな断熱材を使っても問題ないことがわかります。納まりや施工が間違っていなければ、狙った通りの断熱性、外皮性能を確保できます。

家づくりを考える人が、次に気にするポイントはコストですね。

結論から言うと、最もコスパが良い断熱材はグラスウールです。

グラスウールは大量に普及しているため、確保できる性能に対してコストが安いのです。
等級6以上を狙うなら、外付加断熱は必須ですから、断熱材の量が倍増するわけで、コストが気になるでしょう。

でも単純にコストだけを比較しても、あまり意味がなくて、付随している特性も見なければなりません。

耐火性、透湿性、水密性、耐衝撃性、メンテナンス性、耐久性、耐クラック性、遮音性、質感

などなど、、、いろんな観点から無数のサンプルやカタログを取り寄せて検討しました。

自宅では北州さんのアルセコ(alsecco)を採用しました。
(軸組間の断熱材はセルローズファイバー)

断熱材であると同時に、外装材でもある一連の商品です。
断熱材部分はロックウールです。

アルセコはコストが高いのですが、それを補って余りある特性を備えているので採用しました。(軽自動車、普通車、高級車、スポーツカーを比較して、安い高いを言っても意味がないのと同じで、価格だけで決められません。)

採用しておいてなんなんですが、、、アルセコでなければだめだと言うつもりはないですし、弊社の設計でこれしか使わないってこともないです。
要は適材適所。
敷地条件を読み解いたうえで、単純に私が気に入ったので自邸で使いたいな、ってことです。

防火構造認定について

アルセコにしたのは、他にも理由があって、外付加断熱で防火認定を取っているものが少なかったのです。今でこそ「北総研の木貼り外付加断熱外壁」の防火認定とか、いろいろ出てきましたが、計画時点では外付加断熱が可能な防火認定品は、ほとんどが窯業系サイディング材に限られていました。

他にも発泡ボードを主体とした防火構造認定の外付加断熱材を使ったことはあったのですが、隣家がぎりぎりに迫る立地ということもあり、しっかりした耐火性が欲しいと感じました。防火構造の認定といってもそれは認定上、防火試験上の話であって、欲しいのは本当の耐火性。

他にも、肝である遮音性とかローメンテナンス性とか、、、

遮音性について

遮音性に関しては、北州さんの資料では、「サイディングと同等」という結論の資料があるのですが、これは材料自体の比重の観点からの計算値の話であって、ロックウールの層が中空層であると考えると、音の絶縁構造になっているので、実際はもっと遮音性があるはずです。

意外に思われるかもしれませんが、コンクリートの壁の厚さ80cmと、6mm厚のガラス2枚の間に中空層150mmがあるものは、透過損失量が同じなのです。一つの躯体を厚く作るより、2重+中空層のほうが効果的なのです。(同様に2重より3重のほうが効果があり、各層ごとの透過損失の加算則が成り立ちます。)

防音壁を作るには、中空層を構造的に絶縁するのが基本です。alseccoは外装の下地がなく断熱材を直接躯体に連続的に貼り付けていきます。また、防音壁の中空層はデッドに作る(吸音状態にする)のが鉄則ですが、それはロックウールがあるわけで、、、。いわゆる防音壁としての条件を備えているように思えます。

ちなみに、alseccoはほどよい硬さと柔らかさのある綿のような断熱材です。

遮音性に関しては、計算で把握するには限界があります。2次元的に「部分」を取り出して計算することはできますが、実際は窓や換気口、気密性、サウンドブリッジなど種々の要因が3次元的に絡んでくるので、正確な遮音性は計算できないのです。かといって、大企業のように実大のモックアップで検証することもできません。

そこで、ネットの情報だけでなく、見学先の体感、施工現場に足を運んでの体感から決めたのですが、、、結論としては遮音性はバッチリです。(いつか、専門業者さんに実測を依頼しないといけないですね。)

というわけで、都心で建てるにあたって、私が住宅の外壁に求める特性をすべて兼ね備えていたのでした。

アルセコが高い理由

高い理由はドイツからコンテナで輸入してくるからです。

「断熱材は空気の塊だ」
「海外から輸入するのは空気を輸入するも同然」
「ぜんぜんエコじゃない!けしからん!」

っていうご意見もあるんですけど、こういう商品を日本人が求めてこなかった結果でもあります。でも、本当に良いものなら輸入もやむを得ません。日本は戦時に焼け野原になったことを教訓に、各種耐火性、防火性、そして法規や消防のインフラを整えてきたにもかかわらず、なぜかこういう商品が出てこなかったのですね。なんででしょう?
国産の商品の開発がされると良いですね。

ちなみに国産のロックウールは高炉スラグから作られていますが、alseccoのロックウールは玄武岩を溶かして作るもので「ミネラルウール・ラメラ」と呼ばれ、日本のロックウールとは別物です。要は石でできた断熱材ということで、自然素材でありながら100%不燃材です。火事程度の炎では燃えません。


以下、アルセコ(alsecco)の解説動画を転載
(ミュート設定になっています)


「alsecco推し」な記事になってしまいましたが、、、良い外壁材だと思います。
コストのこともありますが、代えがたい特性もあり、選択肢の一つとして検討されても良いのかなと思います。

単に外皮の断熱性能を追求するのではなく、「住宅地の騒音」「敷地の広さ」「防火規制」「計画地の特性」「コストと性能のバランス」を読み解いて最適な選択をすべきだと思います。