「素敬の家」の外壁材と外付加断熱はカパロール(旧・アルセコ/alsecco)を使いました。カパロールとはロックウールを基材とした、表面の仕上げを含む、外装材一式を含む商品名です。
竣工時点では防火構造までの認定しかありませんでしたが、25年4月3日に横浜・鶴見区の横浜火力発電所内の試験棟で、カパロールの45分準耐火構造の認定試験が行われました。
本稿では外壁材の準耐火試験とはどのようなものか、見ていきます。
試験場に入ると、巨大な加熱試験機が鎮座しており、圧倒されます。
まず、外壁材の外側、つまりカパロール側の面から試験します。
外壁材の準耐火試験は表裏の両面から試験しなければなりません。
ちなみにカパロールは外壁材であると同時に耐火材・外付加断熱材ですが、軸組間(柱と柱の間)の断熱材はセルロースファイバーという条件での試験です。
つまり2重の断熱構造の準耐火試験ということです。
隔てられた部屋から温度の詳細なチェックや炎のコントロールが行われます。
この穴の一つ一つから900度近い炎が出てきます。
ここまでされたら、どんな外壁材だって燃えるのでは?。
圧倒的迫力を前に、そう思わざるを得ません。
その炎に晒される試験体。
下のレールを移動して、炎の出る試験機と接続されます。
壁のいたるところにセンサーが仕込まれ、厳重な温度と変形量のチェックがされます。
少しずつ炎が出始めました。
少しずつ火力が高まっていきます。
800度近くまで高まり、ハラハラ、ドキドキ。
最終的に900度まで高まります。
一般に、火災時の温度は下記のように推移すると言われています。
| ・初期火災(着火〜数分):200〜400℃ ・成長期〜フラッシュオーバー前:400〜600℃ ・フラッシュオーバー後(全室火災):800〜900℃ ・最盛期(ピークは短時間):800〜1,100℃ |
耐火設計では、こうした実火災の状況をモデル化したISO 834 標準加熱曲線が用いられることが多く、本試験もこの曲線に基づいています。
ISO834の特徴は、初期の温度上昇が非常に速く、一度上がった加熱が途中で減衰しない点にあります。
つまりこの試験は、
「実火災の中でも最も厳しい条件を、時間いっぱい与え続ける」
という前提で組み立てられています。
30分耐火で想定される炉内温度は約840℃。
45分準耐火の場合は、約900℃まで耐えることが求められます。
ちなみに木材の発火温度は、約 260〜300℃です。(引火しやすくなる温度)
温度は実火災と同レベルでありながら、被覆・断面・炭化を読み切ることで成立するのが準耐火です。試験前に試験官と協議しながら、どのレベルであればクリアできるか、綿密に打ち合わせ、試験体が制作されます。
仮に被覆を際限無く重ねれば、当然ながら耐火性を上げられます。しかし同時にコストも際限無くかかかるので、これを回避するためにあえて「ギリギリのラインを攻める」というのが試験の通常です。
そうこうしているうちに45分たって、試験体を取り外します。
膨大な煙とともに、轟音が響き渡りながら試験体が切り離されました。
煙と湯気がもうもうと立上がり、火事場のような匂いが立ち込めました。本当の火事というのは家の全てが燃えるわけですが、これは外壁単体の試験です。それでもこの匂い。
さて、外壁材の表面仕上はメッシュと樹脂モルタルなので、ことごとくぼろぼろになり、表面を掻き落とすと簡単に剥落しました。しかし、、、。
近づいてみると、ロックウールは何も変化していない事がわかります。
つまり、溶け落ちたり、穴が空いたり、亀裂が入っていません。
内側が試験機に接続されました。今度はロックウール側が外側を向いています。そして同様にセンサーが取り付けられました。
なんだかターミネーターが出てきそうな雰囲気ですが、、、
のぞき窓からでも、顔の皮膚や眼鏡が溶けてしまいそうです。
ものすごい数のセンサーが取り付けられています。
むしろセンサーが溶けないのかしら?
内側は強化石膏ボード15mm
流石にボードは剥がれ落ち、内部の木はボロボロに炭化しています。
しかし外側のロックウールは無事です。
ここで試験の方法、判定内容について。
準耐火構造は、JIS/告示で定義された評価項目によって、主に3つの要素によって判定されます。
① 構造安定性
所定時間(45分)
・自重+想定荷重を支持できているか
・倒壊・著しい変形が起きていないか
・木が黒焦げ・炭化していてもOK
・有効断面が残り、耐力が維持されていれば合格
試験結果からは焼けてボロボロに見えますが、実は「ボロボロ=耐力ゼロ」ではありません。木は炭化層の内側が生きていれば、構造的にはまだ立っているからです。
② 遮炎性
・裏面に炎が出てこない
・隙間から持続的な火炎が噴き出さない
・開口・貫通が生じない
ボードが途中で落ちても失格ではなく、落ちた後でも下地や残った層、炭化層が火炎を遮断していればOKです。
つまり「燃えている」と「火が貫通する」は別物ということです。
③ 遮熱性
非加熱側の温度上昇が「平均 +140℃以内、最高 +180℃以内」という状態を45分維持できていれば合格です。
なぜ「中がボロボロ」でも合格なのか?
これは制度の思想そのもので、準耐火構造の目的は建物を守るためではなく、「人が逃げる時間を確保する」ためだからです。45分後には建物が使い物にならなくなるという前提があり、それでも倒れず、火が抜けない、裏が熱くなりすぎないという状態で45分を乗り切れば合格、という試験なのです。
まとめると、準耐火とは「壊れながら、使命を果たす構造」ということになります。
、、、とはいえ、昨今は様々な付加断熱が準耐火構造の認定を取得しているのも事実。45分の耐火試験をクリアしていることには変わりありません。
では何が決定的に異なるのか?
正式な試験方法とは異なるのですが、試験場でEPSとロックウールをバーナーで炙って比較してみました。試験以上の高熱1400°です。
ロックウールは変化無し。
表面の樹脂モルタルの樹脂成分が焦げましたが。
裏面に至っては変形もなく、焦げすらありませんでした。
断熱性とか透湿性、耐久性だけでなく、こんなタフさに惹かれたことが大きくて、自宅:「素敬の家」で採用することにしたのです。都心の住宅街、密集地であればなおさらです。
上記の写真でミネラルウールと書かれているのはロックウールのことです。これはヨーロッパの呼び方で、意味は同じです。
ヨーロッパのロックウールは、玄武岩を溶かして綿状にして断熱材にします。ですのでミネラル=鉱物ということでミネラルウールといいます。繊維方向は壁面に対して垂直に立つよう制御されており、これが適度なクッション性や耐クラック性、圧縮強度、透湿性に寄与しているようです。
日本で製造されているロックウールは鉄鋼スラグから作られて下り、繊維方向は壁面に平行となっており、名前は同じでも物性が異なります。
断熱性能(λ値=0.040前後)は両者ともほぼ同等ですが、 耐火・高温時挙動・長期安定性 が異なります。
ミネラルウールは繊維の融点が1200℃~1400℃、日本の鉄鋼スラグ系のロックウールは900℃~1100℃で、高温時の収縮度もミネラルウールの方が小さいようです。試験結果からも、火災時の変形が小さいことは実感としてわかりました。
いずれにしても耐火性はどちらも十分に高いと言えます。
ただし、カパロールの場合はロックウールを隙間無く連続的に壁面に貼っていく工法なので、木桟などの可燃部が無いことがポイントとなっています。
ヨーロッパでは断熱材と言うよりは「耐火材」という位置づけなのに対して、日本では「断熱材」としての位置づけで、耐火性は石膏ボードやモルタルなどに依存するという発想の違いが前提にあるようです。
デメリットというか、最大の弱点は、、、カパロールは外装材としての平米単価が非常に高額ということです。
しかし耐久性が非常に高く、また地震時のクラックも入りにくいことが実績レベルで証明されております。また、表面の塗料が非常に高性能なために汚れがつきにくく、外壁維持にかかるトータルコストが少なくなると想定されたので、ちょっと無理して「素敬の家」で採用したのでした!
下記のリンクから、試験の経過と結果、インタビュー動画をご覧いただけます。
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