夜の風景を通して、素材や音、照明の考え方に触れてみます。
窓の位置がズレているでしょう?
外付加断熱をした場合、壁の厚みが増えることで「水切り」の面積が大きくなります。雨が降ってきた場合、上下で窓の位置が重なっていると、まとまった大きさの粒が下の水切りに当たる事があり、深夜だと音が気になってしまいます。
プランニング、立面計画から考える雨音対策です。
本当にちょっとしたことなんですが、この小さな積み重ねが生活の質を高めていきます。
駐車場・アプローチ
駐車場の土間には「墨汁」を練り込んであります。
安価に施工できて、溶け出すこともありません。
適度なムラがでて独特の雰囲気が出ます。
玄関前ポーチ
照明は極力少なくしました。
複数の照明が近接すると、影が混ざってうるさい感じになります。
適度な距離感を持たせて配置しました。
静粛性はこの家の大事なテーマの一つですが、視覚的な静粛性にも配慮しています。
玄関前
床仕上げは御影石のジェットバーナー仕上げ。
石を模したタイルとは明らかに異なり、上質な質感や歩行感となります。
正面の屋外収納は熱処理したカラマツ材で、「改質」されているため腐りません。
玄関前植栽と照明
ジューンベリーの根本に照明を組み込みました。
軒天の杉板に木の葉の影が映り込みます。
2階リビング
開放的に見えると思いますが、実際には15畳程度しかありません。
物理的に広くしなくても、天井の高さや窓の配置によって開放性はいかようにも作れます。
照明は照度計算を何度も掛けながら、最小限の数に抑えてあります。
ちょっと暗めに感じるかもしれませんが、将来の生活に応じて、光を継ぎ足しながら空間の質をバージョンアップしていくという考え方です。
照明を最小限にした分、後で必要に応じて照明を足せるように、少し多めにコンセントを配置しました。また、今では考えられないような家電が出現する可能性もあるので、将来的な柔軟性を確保しておきます。
夕暮れ時から夜にかけて、空の色の変化がきれいです。
冬になると、朝一番に東面の窓のブラインドを上げます。(一番左の窓)
日射熱を取り入れるだけでなく、部屋の奥まで差し込む光が入ってきます。
「建築が人にもたらす活力」についてよく考えるのですが、弊社にとって、東面の窓は欠かせません。
床材
メインの床材はウールカーペットです。
カーペットは吸音性があり、歩行感が柔らかいという特徴があります。
どの場所でも寝転がってくつろいだり、子どもの遊び場・居場所になるような「おおらかさ」があります。フローリングだとラグやソファなど、アイテムで居場所を作らねばなりません。
また、これは重要なことなのですが、カーペットはホコリが舞い上がることがありません。ある程度ホコリを吸い込んでくれるので、掃除の頻度を減らせます。
週に1回は掃除機をかけますが、まとめて吸い取る感じです。フローリングだと、ホコリや髪の毛が気になって、頻繁に掃除が必要になってしまいます。日々の負担がかかりにくいのです。
キッチン
夜になるとキッチンの雰囲気が変わってきます。
ミニマルで落ち着いた佇まいになります。
水廻りの床材はリノリウム。
99.9%天然素材でできており、耐摩耗性や耐薬品性に優れ、耐久性があります。サラサラした手触り、足触りで感触がとても良いです。
3階
足元にピンホールライトを埋め込みました。床にある小さな白い点が照明器具です。
窓につける予定のハニカム・サーモスクリーンの凹凸を浮かび上がらせます。
階段
階段は杉の巾接ぎ材、ノンスリップはウォールナットです。
階段の奥行きと段差は厳密に検討しました。様々な実例をサンプリングして、老後でも上り下りしやすい階段にしました。段の奥行きを広く取り、段差を小さくして勾配を緩くしてあるのです。ちなみに老後に使いやすいということは、小さなお子様にとっても使いやすいということです。
内覧の際は多くの方にお越しいただきましたが、足に痛みをお持ちの方ほど登り始めた瞬間に気づかれます。
部屋を広く取ろうとして階段面積を小さくすると、急な勾配の階段になってしまいますが、ゆとりのある計画にしておかないと将来辛くなってしまいます。
長く住むことを前提に作るのですから、長期的な視点で設計しなければなりません。
脱衣所
床はリノリウム、浴室の床は御影石、浴室の壁はモールテックスです。
御影石が濡れると黒くなり、床から浴室の壁まで連続性が出てきます。
壁は全てヒノキ貼りとしました。
壁の中には調湿性と吸音性を期待して、セルローズファイバーを充填しました。
シャワールーム
我が家には浴槽がありません。シャワールームです。
家族全員がシャワー生活に慣れていたので、思い切って浴槽をなくしました。
※通常の設計では普通に浴槽を組み込みます。
照明は絞って、洞窟の奥でランタンの光を頼りに沐浴しているようなイメージにしました。浴室の床は御影石ですが、シャワーの水の跳ねる音が「ピチッピチッ」と澄んだ高い音がして心地良いです。ユニットバスだと「ダバダバッ、ドボボッ」って感じになりますね。
毎日のシャワーの時間が本当に心地良いです。
洗面台
洗面台はコーリャンで、バックガードとサイドガードをカウンターに一体化してヒノキに埋め込みました。掃除がしやすくなりますし、壁が汚れにくくなります。
ヒノキはセラミック塗装を掛けました。
木の素材感を損なうことなく、水を弾きます。
子供部屋
照明は部屋の中心に配置せず、少し壁側に寄せて配置しました。
こうすることで少ない照明でも、壁が明るく見えて、部屋内が明るく感じられます。反対側は暗くなるので、必要に応じて読書灯やスタンドライト、ポータブル照明と組み合わせます。光の分布にムラをつくると、奥行きを感じる空間になります。
寝室
建具は手掛けの奥にウォールナットを組み込んでアクセントにしました。
本棚は既製の杉の巾接ぎ材をカットしたものですが、節有りです。本を詰め込むと、全く見えなくなるので、節の有無はあまり関係なくなります。こういうところでコストダウンをしています。