AKIM本社屋新築工事における目標は、将来的な発展や使い方を緻密に考え抜いて、敷地全体や工場内部が相互に有機的に機能する工場にすることでした。本社屋本体は一般的な工場のイメージとは異なり、ほとんどオフィスビルのような外観と機能性を有しています。
敷地は1辺が約150mの正三角形に近い特殊形状です。約1万m2ある敷地と5つの建物のポテンシャルを100%引き出せるように計画しました。
工場内部では社員の出退勤が変則的になっても対応できるような、複雑にしてシンプルな仕組みを構築しました。デジタルの良いところとアナログをミックスさせて合理性を追求しました。植栽の間隔やセキュリティシステム、データのバックアップシステムといったことから、業務の変動に柔軟に対応するための諸室の機能や配置に至るまで、多岐にわたって議論と検討を繰り返しました。
ベントキャップ(外壁部の窓の上の銀色の丸部分)は美観を考慮して1階上部にしかありません。周辺の地形の関係で建物上部がよく見えるのです。2階のベントキャップは梁を内側に偏心させてダクトを通し、パラペットの内側に出しています。雨仕舞いが懸念されたため、施工サイドには2重3重の配慮をしていただきました。怖いのは屋根に雪が積もったときで、排気周りに雪が積もって風が吹き荒れても、雨漏りする確率が可能な限り低くなるように施工されています。1階上部のベントキャップは必要なダクトの本数や経路を何度も練りなおして、窓の上に規則的に並べました。
この建屋はエントランス、設計や経理のオフィス、工場、食堂といったセクションで構成されています。カーテンウォールやガラスにはすべて熱線反射塗料を塗ってあります。ガラスが青みがかっているのはそのためです。機械の組み立てを行う部屋はセンサーの誤作動等を防ぐため、光や紫外線の透過を限界まで抑えるフィルムを貼っています。
建屋に大小2種類のAKIMロゴを配置し、裏面にLEDを仕込みました。経年で配光が落ちてきても問題ないように強めの光になっています。
大きく飛び出した庇は車寄せです。 雨の日でもお客様を出迎えられるような張り出し方を計算しました。
構内の時速制限を設け、「一方通行」になるように路面標示しています。「双方向通行」にすると、敷地の使用効率が落ちるだけでなく、事故の確率が高くなるからです。
エントランス
車寄せはゆとりをもたせ、最大で4台の車が乗り入れできるスペースがあります。
受付は守衛所と同じくアキムさんのコーポレートカラーを1段階落としたようなオレンジで統一しています。本社屋自体は鉄骨造の建物ですが、受付部分は木造の平屋です。左側のニッチには大画面モニターが埋め込まれ、会社の案内映像などが流れます。右手の裏側にクロークがあります。
右側のソファはデイビッド・チッパーフィールドのエアフレーム。 椅子周りに観葉植物を配置する予定です。
階段は溝形鋼を組み合わせてつくりました。上の梁から角部を吊っています。天井はとても苦労しまして、リブ加工を最小限にしつつ、リブに光の階層がゆるやかに生まれるようにバランスを配慮しました。排煙垂れ壁は透明シートを使って、空間の広がりを邪魔しないようにしました。
最後にクライアントが気に入っている絵を飾ってエントランスができました。
※特記なき写真はRio Kurosawa
AKIM本社屋新築工事 データシート
プロジェクト概要
建築主 | アキム株式会社 代表取締役 栗原博 |
住居表示 | 埼玉県東松山市大字宮鼻860-12 |
敷地面積 | 9971.71m2 |
都市計画区域 | 市街化調整区域 |
防火指定 | 無し |
耐火仕様 | ロ準耐-2 |
用途 | 機械製作工場 |
合計建築面積 | 2831.16m2 |
合計延面積 | 4686.02m2 |
個別概要
工場本体 | 構造:鉄骨造3階建て 建築面積:2275.83 m2 延面積:4201.70m2 |
守衛所 | 構造:木造平屋 建築面積:114.27m2 延面積:114.27m2 |
車庫 | 構造:鉄骨造平屋 建築面積:69.46m2 延面積:69.46m2 |
倉庫 | 構造:木造平屋 建築面積:80.73m2 延面積:80.73m2 |
研修センター | 構造:木造平屋 建築面積:290.87 m2 延面積:219.86 m2 (テニスコート:1549.76m2) |
設計者概要
設計監理 | 株式会社 VIT 担当:黒澤亮、中田哲寛 |
開発 | 株式会社 東建企画設計 担当:野口健吉 |
構造設計(本社屋) | JFEシビル 株式会社 担当:入川英二 |
構造設計(守衛所、車庫、倉庫、研修センター) | 株式会社 VIT 担当:黒澤亮、小薗照美、鈴木直美 |
設備設計 | 株式会社 山崎設備設計 統括:山崎純悟 電気:鹿野大貴 機械:越田志保、西澤一夏 |
施工 | 株式会社 島村工業 現場担当:平塚忠男、金子吉孝、祝浩徳、篠塚昭洋、石橋康平 電気設備担当:中村電設工業 株式会社 西山弘一 機械設備担当:株式会社 ソーセツ 田島哲也 |
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